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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第74回

無政府状態のソマリアで海賊が生まれた背景

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雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。

『キャプテン・フィリップス』

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2009年4月にソマリア沖で起こった、マースク・アラバマ号シージャック事件を元にしている。ケニアに向かうべく航海であったフィリップス船長(トム・ハンクス)の前に海賊が現れる。彼らはフィリップス船長を人質に取るが、アメリカ本国は、国の威信をかけて海軍特殊部隊SEALsを出動させた――。

原作/リチャード・フィリップス、ステファン・タルティ 監督/ポール・グリーングラス 出演/トム・ハンクスほか 日本での公開は、11月29日(金)より全国ロードショー


「オバマは、やる時はやる」

 そう世界に知らしめたのは、就任間もなく起こった、ソマリア海賊によるアメリカ貨物船シージャック事件の解決だ。

 人質になったフィリップス船長は、自らの体験を『キャプテンの責務』と題して出版した。その映画化『キャプテン・フィリップス』では、トム・ハンクスが船長を演じる。

 2009年4月8日、コンテナ輸送船マースク・アラバマ号は、アラビア半島のオマーン王国からケニアに向かって出航した。しかし、その途中、インド洋に向かって突出しているソマリア沖を通らねばならない。そこでは海賊行為が横行していた。

 ソマリアは1960年にイギリスから独立して以来、政権をめぐって内戦が続いている。治安を維持する中央政府がなく、海賊が野放しになった。彼らはタンカーや貨物船を襲った。目的は積荷や現金より、乗組員を人質にとって要求する身代金だ。

「ソマリア沖を迂回するべきでは?」乗組員の提案をフィリップス船長ははねつける。現在、船長は海賊の危険を回避しなかったとして訴訟になっているが、船長の言い分はこうだ。「海賊は大型漁船を母船にすることでインド近くまでを勢力範囲に広げているので、迂回しても無駄だ」

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