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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第31回

若者と老人の命の価値は同じか? 超高齢化社会で揺るがされる伝統的倫理

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか……気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

第31回テーマ「超高齢社会で命は平等なのか?」

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[今月の副読本]
『生と死の倫理』
ピーター・シンガー/昭和堂(98年)/2415円
医療技術の発達とともに、衰退する宗教的倫理――。先進国で顕著となった、イノベーションによって変化する生命の根本的概念を、オーストラリアの倫理学者が考察。新しい生と死の取り組みに、整合性はもたらされるのか?


 日本人の平均寿命は世界最長だということはよく知られています。WHO(世界保健機関)がだした"World Health Statistics 2011"によると、日本人の平均寿命は男性が80歳、女性が86歳となっており、2位のフランス(男性78歳、女性85歳)を引き離して世界最長です。これは国内的にも国際的にも評価されている日本のすばらしい点ですね。実際、一般的にも「長生きすることはいいことだ」と思われていますし、また平均寿命の長さはその国の医療制度がどこまで整っているかということとも関係していますから、やはり平均寿命が長いというのはすばらしいことでしょう(ちなみにWHOの"World Health Report 2000"では、医療の質の高さや医療サービスへのアクセスのよさ、医療費負担の公平性など、さまざまな基準からみて、日本の医療制度は世界最高だと評価されています)。

 とはいえ、少子高齢化がこのまま進んでいき「超」高齢社会が実現されていくと、日本人の平均寿命の長さはもろ手を挙げて評価されるものではなくなっていくかもしれません。長生きする高齢者が社会の「お荷物」だと思われてしまう可能性があるからです。そうなれば、「すべての人が長生きすることはいいことだ」という社会の基本的な価値観は崩れていくでしょうし、個々人にとっても「みじめな状態で社会に迷惑をかけてまで長生きしたくない」という感情がより強くなるでしょう。

 たとえば最近もこんな発言がありました。元総理大臣で、現在の第二次安倍内閣では副総理と財務大臣を務めている麻生太郎氏が1月21日の社会保障国民会議で述べた発言です。報道によると麻生副総理・財務相はそこで、終末期医療や延命治療に触れ、終末期の患者を「チューブの人間」だと表現しつつ、個人的な希望として「私は遺書を書いて『そういうことはしてもらう必要はない。さっさと死ぬから』と書いて渡してある」と発言しました。さらに、「いいかげん死にてえなあと思っても、『とにかく生きられますから』なんて生かされたんじゃあ、かなわない。しかも、その金が政府のお金でやってもらっているなんて思うと、ますます寝覚めが悪い」「さっさと死ねるようにしてもらうとか、いろんなことを考えないといけない」と述べたということです。

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