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第2特集
老舗文学賞の失墜と本屋大賞の功罪【1】

出版業界の新タブー!? 直木賞、芥川賞、本屋大賞......文学賞に異議あり!

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──ここ数年、直木賞などの結果や内容に対して、不満の声が大きくなってきている。その一方、"書店員が選んだ一冊"をコンセプトに発足した「本屋大賞」の受賞作が、毎年確実に売り上げを伸ばし、注目を集めている。これまで権威のあった文学賞への不信感は募り、新設の文学賞が元気がいいのだ。この状況を、文芸作家や書評家は、どう見ているのか?台風の目となっている「本屋大賞」の実態を追いつつ、過渡期にある現在の文学賞の意義を問う。

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(絵/師岡トオル)

 本が売れない。出版関係者たちの口ぐせとなっていたつぶやきが、いまや世間にまで浸透している。特に文芸作品の売れ行きの悪さは深刻だ。大御所の作家でさえ、初版2000〜3000部が当たり前で、それでも増刷どころか在庫の残る作品が大多数だという。現在の出版不況を脱するには、すべての文芸小説の出版を一時停止して、人気マンガなど売れ筋の優良コンテンツだけで市場を埋めるしかないのでは? という意見も出てくるほどだ。

 しかし、ここで明確にしておきたいのは、小説は売れないのではなくて、売れる小説と売れない小説の二極化が進みすぎているだけだ。出版ビジネスにおける全体のパイは、750万部という戦後最大のベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)が出版された1980年代から、それほど変わっていないはずだろう。

 もともと小説は売れるものではない。日本の文芸作品で1000万部を超えた作品はまだひとつもないし、5万部売れただけで大ヒットなどと言われる現状は、ほかの業界からは失笑されるに違いない。


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