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──抜群のスキルで日本語とラップの関係性を軽妙洒脱に再構築している、鎮座ドープネス。2010年代の顔となり得るそのラッパーに、『クラブカルチャー!』や『女装する女』の著者として知られる湯山玲子女史が話を訊いた。

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 YouTubeとツイッターの時代になり、元気を取り戻したのが音楽ジャンル。業界は氷河期だと言われているが、次の時代を予感させてくれるような才能は、そちらの売り上げとは関係なく、かつてない速さと、リスナーの実感を伴い知れわたっていく。

 鎮座ドープネスを知った系こそがまさにそれだった。あるフォロワーからのツイッターのつぶやきで、YouTubeのタグに飛んでみると、渋谷の路上でフリースタイル・ラップをする彼の映像。道で会った仲間との挨拶やおしゃべりのような関係が即座にラップになり、彼の口から飛び出してくる。自然体、と言うのは簡単だが、私のようなジャンルの素人でもそれを支えるスキルがとてつもなくスゴいのは、すぐに理解できた。

 そんな彼が昨年発表したアルバム『100%RAP』は、ヒップホップお得意のメッセージ性や「俺節」とは感触の違った、生活の中にふと立ち現れる情感や言葉を覚えたての子どものお遊び感覚にあふれ、日本語ラップのひとつのおもしろい到達点になっている。

──そもそもヒップホップとは、どのように出会ったんですか?


鎮座(以下、)  さんピンCAMPで日本語ラップにどっぷり浸かった世代ですが、入り口はスチャダラパーの「今夜はブギー・バック」(94年)。当時、中学生でバスケやスケボーにハマってたけど、その後ろで海外のヒップホップが流れていたりして。その後、生活してた高校の寮に先輩のターンテーブルがあって、その人のヒップホップのパーティに遊びに行ったり、自分もラップ・ユニットを組んだりしました。

──ヒップホップ特有のマッチョイズムや強いメッセージ性からは袂を分かって、どちらかというと、その辺の草食系男子がつぶやくような、間合いと内容かな、とも。

 俺はおじいちゃんになってもラップしてたいんです。2000年頃にSHING02とかザ・ブルー・ハーブみたいなメッセージ性が強くてシリアスな日本語ラップがはやって、それはそれでカッコいいと思ったけど、自分はそのスタイルじゃないなと。04年頃になるとそのブームの熱も冷めてきて、現在も所属するユニットKOCHITOLA HAGURETIC EMCEE'Sのメンバーと路上でフリースタイルを始めたんです。ちょうどその頃に同じようなことをする人たちが現れて、いろいろとつながりが生まれていって。そういうパーティ・ラップみたいな、みんなが参加して遊ぶ体験が日本語ラップには抜け落ちていたんです。それは、スチャダラパーもZEEBRAさんも体現してない。実は昨日も路上でやってたんですけど、通行人が結構立ち止まってくれる。オレオレ的な感じではなく、「買い物してるんですか?」とかラップしてると、今の自分たちのことを歌ってるんだとオバちゃんでも気づくんです。

──そういう状況を読み取るフリースタイルは、どうしたって考える間のロスがあって、ビートよりラップが遅れてしまう感があるけど、鎮座さんはむしろビートの前に突っ込んでいくようで......頭の中はどうなってるわけ?

 これまであらゆるレコードの上でラップしてたらこうなったんですけど、いかに何も考えないかが重要。口をテキトーに動かして出てくる信号みたいな音が、だんだんとリズムにハマって言語化されていく感覚なんです。それを楽しく、そして粋にやりたい。

──粋といえば『100%RAP』の「朝起きて君は...」は普通の男子の日常にふと見えるセクシーさがあって、それはほとんど女性からの視点ですよ!

 一曲目で高田渡さんの「ごあいさつ」をカバーしたけど、彼の表現が好きなんです。仕事をクビになり彼女がベッドで寝て待つ自宅に帰るという歌があって、全然仕事がデキない男だけどモテてるというのがイイ(笑)。

──かつてのフォークには、そういう歌がありましたよね。

 それとはっぴいえんど、特に細野晴臣さんの音楽はヒントになった。ロックを日本語で遊びながら歌ってるなと。だから、アメリカの黒人がラップする「マザファッカー」とか「チェケラッチョ」【註】をどう自分のものにするかが大事。そういう言葉はさまにならないといけないからマジな感じで言いもするけど、フザけて使ってもいいんですよ。

──ULTIMATE MC BATTLE(フリースタイル・バトルの国内大会)で昨年優勝されましたが、ほかのラッパーのディスる戦い方とは違いますよね。

 お互い初対面なのに、どうしてみんな「殺すぞ!」とか言えるのかと(笑)。俺の根はただのパーティ・ピープルなんです。で、実はパーティの快感を一番共有できるのは子どもだと思うんです。90年代の『ポンキッキーズ』にスチャダラのBOSEさんが出演してたけど、今ああいう番組に出たいという夢があって。

──そういえば、私の会社の従業員の息子は「オラハラッパー」(前出のアルバム収録曲)が大好きで、「ラッパー、パッパー」とか口ずさんでいるそうですよ。

 あの曲は韻を踏み倒していて、リリックの意味がわからない子どもにも快楽が伝わるんです。なにせ俺は、 "ヒップホップ界のおしりかじり虫" を自称して日々ラップしてますから!

(取材・文/湯山玲子)

【註】マザファッカー(motherfucker)は「クソ野郎」、チェケラッチョ(Check it out, yo.)は「注目しろ」という意。

湯山玲子(ゆやま・れいこ)
著述家。出版、広告ディレクター。日本大学藝術学部非常勤講師。著書に『クラブカルチャー!』(毎日新聞社)、『女ひとり寿司』(幻冬舍文庫)、『女装する女』(新潮新書)など。カルチャー、女性の実態を読み解く視点に定評がある。

鎮座ドープネスとは?

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鎮座ドープネスは、1981年調布生まれの国立育ち。YouTubeにアップされたフリースタイルの映像(写真上/http://www.youtube.com/watch?v=0rdmJj_zJGk)は、16万回超のアクセスを記録。まずはこれで度肝を抜かれよう。

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気になれば、昨年リリースされたソロ作『100%RAP』(EMI/写真右上)と彼のユニットKOCHITOLA HAGURETIC EMCEE'Sの『HAGULIFE』(KSR/写真右下)を聴こう。ポップ・アイコンになり得る存在なので、テレビ局の方々もお声がけくださいませ。www.chinzadopeness.com




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