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最強小売り業のスネの傷

再び セブン-イレブン 社長を直撃! “加盟店の反乱”をどう見る?

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セブン-イレブン本部は「加盟店とは対等な契約関係」と言い続けているが……。

 9月29日、大阪・兵庫などのセブン-イレブン加盟店オーナー(以下、オーナー)7人が、見切り販売(弁当や惣菜など賞味期限切れ前の商品の値引き販売)を制限され、商品の廃棄を強いられたとして、セブン-イレブン・ジャパン(以下、本部)を相手に合計約2億3100万円の損害賠償を求める訴えを東京高裁に起こした。第1審から東京高裁で争われるのは、6月に公正取引委員会が、見切り販売制限を加盟店に行うことをやめるよう、本部に排除措置命令を出したためで、独占禁止法の規定に基づいたものだ。

 原告オーナーは同日会見を開き、「排除措置命令が出た後も、加盟店ばかりに負担を強いる本部の姿勢は変わっていない」と本部を批判。会見後、原告オーナーに加えて、オーナーの労働組合「コンビニ加盟店ユニオン」副委員長である増田俊郎さん(八王子南口店経営)も合流し、公取委へと向かった。本部批判をマスコミなどで行ってきた増田さんら一部オーナーに契約解除を通告するなど、排除措置命令後も「優越的地位の濫用」ともいえる本部側の行為が絶えないためだ。オーナーたちは公取委側に「排除措置命令以上の措置は取れないのか?」と尋ねたが、公取委は「同命令は極刑で、それ以上のことはできない」と答えるのみだった。

 10月29日には、九州のオーナーたち4人が、本部が契約を結ぶ際、加盟店に対して、廃棄や万引などによる原価損が加盟店の負担となることを十分に説明していなかったことなどを問題とし、福岡地裁に約1億3000万円の損害賠償請求を提起している。

 このように、本部が加盟店に対して行ってきた"締め付け"がここに来て噴出し、状況改善を訴える加盟店オーナーたちが、前出のユニオンなどを結成し、さまざまな行動を起こしている。これに呼応して、与党・民主党内部でも、フランチャイズ制度を法的に見直す動きが強まっている。そうした中、9月上旬の前回のインタビュー【本誌10月号掲載】に続き、10月下旬に井阪社長に話を聞く機会を得た。泥沼化する加盟店問題をどう見ているのか?

──ここに、井阪社長がはんこを押した、増田オーナーへの「契約解除通知書」があります。井阪社長は前回の取材で、「マスコミに取材協力をしたのは、契約解除理由ではない」と言いましたが、ここにはテレビに取材協力をしたことが契約解除理由のひとつとして書かれているではないですか。

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井阪社長

井阪 しかし、隠し撮りをすることはいかがなものでしょうか【編註:増田氏は、本部スタッフとのやり取りを隠し撮りして、その実態を告発している】。しかも、その方は「本部との信頼関係がある」とおっしゃっているんですよ。それなのに隠し撮りをするなんて。

──では、ここで増田さんに電話します……(携帯電話を取り出してかけ)もしもし、井阪社長は、「増田さんが本部との信頼関係を破壊するまねをした」と言っていますが、直接、井坂社長と話し合ってください(井阪社長に携帯を渡す)。

井阪 ……(憮然とした表情で携帯を切る)。こんな取材はルール違反ではないですか? 私は角田さん(筆者)との取材を了解したのであって、今は第三者と話すつもりはありません。こんなやり方をするなら席を立ちます。

──わかりました、私の錯誤です。本部と加盟店の信頼関係の問題ですから、直接話をしたほうがお互いのためと思いましたので。ところで、前回の取材では、「井阪社長が『コンビニ加盟店ユニオンと話し合う準備がある』と発言した」とテレビ東京が報じたのは同局の誤報だとおっしゃっていました。しかし、先日(10月10日)放映された『週刊ニュース新書』(テレ東)では、井阪社長がユニオンと話し合うという趣旨を述べているシーンが放映されました。

井阪 それは、(ユニオンに参加する)加盟店と話し合うという意味です。

──コンビニ加盟店ユニオンのメンバーに労働基準法は適用されませんが、労働委員会が同ユニオンを労働組合として認定すれば、労働組合法は適用されると思われます。そうなっても団体交渉に応じないのですか?

井阪 加盟店オーナーさんは労働者ではありません。ですから、応じません。(加盟店契約に準じて)裁判で争います。「労働組合と認定されたら?」という仮定の話には、お答えできません。

──福岡地裁への提訴事由にもかかわってきますが、加盟に際して、オーナーへの会計に関する説明が十分ではないという問題もあります。一般会計と異なる「純売上原価」(廃棄や万引などのロス分は、売上原価に含まないという考え方)という特殊なコンビニ会計用語については、開業前に行うオーナーへの研修段階では説明されていません。ここに研修マニュアルがありますが、そこにも「純売上原価」の説明は一言もない。ところが、加盟店契約し、開業後に配布されるシステムマニュアルには突然出てきます。

井阪 会計についてトレーニング研修でどのように説明しているか、角田さんに説明していただけますか?(広報スタッフと研修センターのトレーナーが加わる)

──研修の段階で、純売上原価を説明しているんですか?

トレーナー はい、しております。いかがわしい説明はしておりません。

広報 ご存知かとは思いますが、当社にはAタイプ(店舗をオーナーが用意する)とCタイプ(本部が店舗を用意する)がありまして、まずどういうシステムかということを、会計も含めて説明させていただき……。

──そんなことは、よくわかってるんですよ。今話しているのは「純売上原価」についてです。なんで研修段階では説明しないで、加盟してからマニュアルの中にいきなり出てくるんですか?

井阪 全部、契約の段階で申し上げていますよ。もともと、フランチャイズ会計が出始めた頃はですね、個人商店の生産性が悪いということで、「本部が会計も含めて面倒見ます。本部と加盟店の役割を明確にしましょう」というのが基本だった。お店は、品揃えとか量とか、自らの裁量権で注文を出し、その代わり、そのロス分などのコストもお店で持ちましょうと、そういう過程でできた会計システムなんです。

コンビニ会計の特殊性を契約前に説明している!?

MEMOセブン-イレブン 株式会社セブン-イレブン・ジャパンが展開しているコンビニエンスストア。2009年3月期の売上高は、約2兆7600億円。店舗数は、約1万2460店(09年9月現在)。代表取締役会長の鈴木敏文氏は、セブン&アイ・ホールディングスの同役職も兼任。

──鈴木(敏文セブン-イレブン)会長は「当社には2名のお客様がいる。ひとりは普通のお客様、もうひとりはオーナーさんだ」と言ってます。

井阪 その通りです。

──つまり、廃棄などのロスにもチャージ(本部へ支払うロイヤルティ)を掛け、オーナーからもしっかりお金を取るということですね(売上原価にロス分が含まれないということは、ロスが多いほど売上総利益は増え、そこにかかるチャージも増える)。

井阪 いや、それは違います。ロスにチャージは掛かっておりません。それに、純売上原価という概念も、企業会計原則で認められているんですよ。

──かつてこのロスチャージの違法性が争われたとき、最高裁判所の判決(2007年6月11日)の判決では、「ロスチャージがあることは契約に含まれている」ことを理由に御社が勝訴しつつも、その存在は認定されたんですよ。ただし、「わかりづらい説明がなされているから、加盟契約時にしっかり説明せよ」ということを指摘されています。最高裁が間違っているんですか?

井阪 最高裁が間違っているとは言いませんよ。説明はきちんとしています。

──最後に、増田オーナーからのメッセージを申し上げておきます。「すでにユニオンと本部の力関係は逆転しています。井阪さんが鈴木体制【編註:鈴木会長が築いた現在のフランチャイズシステム】打倒のクーデターに決起するなら、ご助力する」と言っています。

井阪 (ムッとした表情)それは大きな思い違いです。そう申し上げておいてください。

 幾度か双方殺気立つ取材模様となった。ちなみに、純売上原価について日本公認会計士協会に問い合わせると「そんな会計用語は聞いたことがない」(広報担当者)という返事が返ってきた。井阪社長はあたかも会計学的に認定されているかのように語っているが、少なくとも公認会計士協会の中では常識化していないようである。
(角田裕育)

ユニオンに反発するオーナーも

本部と対立するオーナーたちを、批判するオーナー勢力もあるようだ。10月上旬、本部と加盟店の間で日報や公共料金関係の書類を送付し合う業務用配送便を使い、コンビニ加盟店ユニオンの活動を批判する文書が、各加盟店に配られた。送付元は、災害支援等の募金活動ほか、社会貢献活動を目的に、本部と加盟店で組織された「みどりの基金」(理事長は、豊洲店オーナー)だった。このため、ユニオン加盟オーナーからは「本部の意向では?」との声が上がったが、井阪社長は今回の取材で、「本部はかかわっていない」と否定している。

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