――雑誌不況が叫ばれる一方、グラビア界では30代はおろか、50代の活躍も当たり前となり、SNS発のインフルエンサーも続々と参入。デジタル写真集が量産され、その隣には生成AIによる美女まで現れた。老いも若きも、実在しないAIまでもが同居するグラビア市場で、いま求められる存在とは?
絶対的スターが不在の代わりに、毎週のように意外性のある人物を起用し、世間を驚かせる週刊誌や漫画誌。
かつて週刊誌を開けば、当たり前のように女性の水着グラビアが載っていた。ところが、その〝当たり前〟が崩れ始めている。
「週刊現代」(講談社)は2025年3月から隔週刊化し、誌面リニューアルに伴って女性の水着・ヌードグラビアを完全に廃止。今年8月には「週刊SPA!」(扶桑社)も紙版を月2回刊へ移行し、38年間続いた週刊発行に区切りをつけた。
紙媒体の苦境が叫ばれて久しい。そのあおりを受け、雑誌を主戦場としてきたグラビアアイドルにとっても、活躍の場は狭まっている……。そう思いきや、どうも話はそう単純ではない。
例えば「週刊ヤングジャンプ」(集英社)や「週刊ヤングマガジン」(講談社)などの青年マンガ誌では、今も新人から人気グラドルまで幅広く誌面を飾る。「ミスマガジン」や「ミスFLASH」といったグラビアオーディションも毎年開催されている。
さらに、紙の雑誌が縮小する一方で、デジタル写真集や「週刊プレイボーイ」(集英社)が運営するグラビアコンテンツサイト「週プレ グラジャパ!」をはじめ、各社がサブスクリプションサービスを展開するなど、グラビアを売る場所はむしろ広がっている。
雑誌が売れない時代に、グラビアはどこで、どうやって売れているのか?変わりゆくグラビア市場の現在地を追った。
30代でもまだ現役!?高齢化するグラドル
「今のグラビア界は『混沌としている』という言い方が一番しっくりきます」
そう語るのはライター/編集者のとり氏。かつて「グラビア界の売れっ子」といえば、雑誌の読者にもテレビの視聴者にも広く知られる存在だった。
「各誌の表紙を総なめにするグラビアスターは今もいます。しかし現在は、世間一般ではあまり知られていなくても若者には人気があるインフルエンサーがいる一方で、40代から新たにグラビアを始める人や、50代でカムバックする往年のグラドルもいます。同じグラビアであっても、見ている層によって求めるイメージが全然違うのだと思います。『バラエティ豊か』という言い方もできますよね」(同)
昨年、「FRIDAY」(講談社)でかとうれいこが表紙を飾ったのを皮切りに、同誌では今年、武田久美子と酒井若菜も表紙に。「FLASH」(光文社)には相田翔子が登場するなど、最近は往年のグラドルの〝復活〟がひとつのトレンドになっている。
そして、グラビア界全体を見渡しても、活躍する年齢は確実に上がっている。グラビア編集者の金髪りさ氏は、こう語る。
「元NHK沖縄放送局キャスターで、現在はラジオ沖縄アナウンサーの竹中知華さんと気象予報士の吉井明子さんは、それぞれ40代。現役の若いグラドルをしのぐほど、デジタル写真集が売れています。それに、『声優界ナンバーワン・グラビアン』の井口裕香さんも38歳。近年の傾向を見る限り、30代以上の『お姉さん』のほうが売れ行きがいい気がしますね」
その背景には、10代のグラビアに漂いがちな「大人たちに無理やりやらされている感」がなく、本人の意思が伝わりやすいことも影響しているのかもしれない。
「40代のグラビアというのは、自分から『やりたい!』と楽しんでいる人が多く、見ていて安心感があります。それに、昔の30代は『成熟した大人』というイメージでしたが、今の30~40代は美容に気を使っている人も多くて、単純に若く見えますよね」(同)
昨年、「週刊プレイボーイ」掲載と同日に発売された竹中のデジタル写真集『TOMOKA』(集英社)は、発売からわずか1週間で1万ダウンロードという驚異的な売り上げを記録。本職のグラドル顔負けの人気を集め、今後のグラビア活動にも大きな期待が寄せられている。
◉自前で稼げるのになぜ?
プロの撮影とスマホの自撮りSNSで人気の美女が出版社で脱ぐワケちなぷぷ『楽園遊泳 ~prologue~』(集英社)かとゆり、ちーまき、ときちゃん、ちなぷぷなど、SNSで人気を集めた女性がグラビアへ進出するケースも珍しくなくなった。デジタルだけでなく、紙の写真集を発売する者もいる。
しかし、彼女たちはSNSからFantiaなどのファンサイトへ誘導すれば、人気次第ではそれだけで十分な収益を得られる。それでも、なぜ出版社のグラビアに進出するのか? 本文にも登場した金髪りさ氏はこう語る。
「インフルエンサーの中には、ファンサイト用の写真でもスタジオを借り、ヘア&メイクを立てるなど、本格的に制作している人もいます。それでも、グラビアを主戦場にしてきたカメラマンや編集者が担保するクオリティには、まだまだ勝てません。それを期待して編集部に身を任せる人もいます」
さらに、出版社のデジタル写真集が、新たな客を呼び込む〝入り口〟にもなる。
「例えばmyfansで自身の18禁動画をアップロードするようなインフルエンサーもいますが、それを見るためには1万円くらいかかることもあります。その点、デジタル写真集なら1000円程度。『気にはなっていたけど、高すぎて手は出せない』という人が、まずデジタル写真集を買ってくれるという成功例はあります」(同)
もっとも、プロが作り込めばいいという単純な話でもない。SNSでは、スマホで手軽に撮ったオフ感や素人感のある写真が支持されることもある。その魅力まで失ってしまっては意味がない。
プロが作る「作品」と、本人が発信する「日常」。そのどちらをファンが求めているのか……。今はそのバランスを探っている最中なのだ。