「風通しのいい会社」という虚像――独自路線で愛される“テレ東”が身中に抱えた爆弾

――個性的な番組、複数の名物テレビマンたち、自由な社風――テレビ東京の評価はこの数年上がり続けている。だがその実、イメージとは裏腹に局内では締め付けもしっかりと存在し、親会社である日経新聞社との関係に左右されるなど、権謀術数が渦巻いている。今春には内部から体制を批判する記事が文芸誌に掲載された。テレ東で何が起こっているのか――。

上出氏が手がける『ハイパーハードボイルドグルメリポート』は業界内視聴率も高く、Netflixなど配信サイトでも人気を博している。

 3月5日に発売された「群像」(講談社)4月号が完売した。同誌が完売になるのは実に5年ぶりだという。発売直後から品切れが続出し、ネット書店では高額転売が相次いでいる。

 完売劇の立役者になったと考えられるのは1本の論考だ。タイトルは「僕たちテレビは自ら死んでいくのか」。執筆者はテレビ東京・上出遼平プロデューサーである。

「雑誌発売前日、上出さんが自身のツイッターにゲラの写真をアップしました。1ページ目が読める状態だったんですが、『本寄稿については会社に報告していない』という一文があり、自身が所属するテレビ東京への内部告発であることが明白に書かれていたんです。ツイート自体は大きくバズったわけではないんですが、メディア関係者の興味を引くには十分すぎるほどでした」(在京キー局関係者)

 その前に、上出氏が何者なのか説明をしておこう。氏が手がけた代表的な番組として『ハイパーハードボイルドグルメリポート』が挙げられる。「食べる=生きる」をコンセプトに、ギャングや難民、スラム街など、世界各地の“ヤバい場所”で生きる人々に密着し、その食事風景から彼ら彼女らの背景を描き出す内容だ。2017年10月、2週にわたって深夜特番として放送され、リベリアの元少年兵や娼婦の少女、ロサンゼルスのギャングたちに密着する内容でたちまちに話題に。その後も不定期に放送され、企画者であり自ら各地で撮影に臨む上出Pの名を知らしめた。

「今年1月に放送された『家、ついて行ってイイですか?』SP回では、パンクバンド・オナニーマシーンのボーカルで19年に亡くなったイノマーさんの最期に密着したドキュメンタリーを手がけています。この回はギャラクシー賞月間賞を受賞。佐久間宣行さんや『モヤモヤさまぁ~ず』の伊藤隆行さんらに続く、テレ東の名物テレビマンの新星として熱い注目を集める人物なんです」(放送作家)

「群像」の上出氏による論考は、彼が企画し進めていた暴走族の少年らへの取材を元にした音声コンテンツが、上層部からのストップによってお蔵入りしたことへの失意と憤りを物語るものだった。暴走族という取材対象が“反社会的勢力やそれに準ずるもの”に該当するため、コンプライアンス上の問題がある、というのが主な理由だったことが明かされている。上出氏は組織の理屈に一定の理解は示しながら、報道機関としてのテレビ局がそうした姿勢をとることへの疑問を提示した。同時に、「日頃から『新しい挑戦をしろ』『金を稼げ』と言いながら、臆面もなく『リスクを冒すな』『責任は取れ』と言うトップの下で、我々現場の歩みは前へ進まない」と、現体制の矛盾を指摘している。

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