「……とは何か」という哲学的な問いは、ものをそのように存在させている原因を考えることである

(写真/永峰拓也)

『スピノザ往復書簡集』

スピノザ(畠中尚志訳)/岩波書店(58年)/900円+税
後世の思想に多大な影響を与えた17世紀オランダの哲学者・スピノザが自らの哲学をめぐって19人の友人や門弟と交わした書簡を収録。スピノザの思想と人柄、そして当時の時代背景を理解するための重要な資料とされている。

『スピノザ往復書簡集』より引用
ところで、物に関する多くの観念のうちのどの観念から対象(causa efficiens)のすべての特質が導かれ得るかを知り得るためには、私はただ次の一事を念頭に置きます。
それは、物に関する観念乃至定義はその起成原因(causa effiens)を表現せねばならぬということです。

 私たちはしばしば「……とは何か」と考えることがありますよね。たとえば熱烈な恋愛を経て結婚したにもかかわらず結局離婚することになった人は「結婚とは何か」と考えるかもしれません。ひどい親をもったおかげで苦労した人は「家族とは何なのか」と考えることもあるでしょう。仕事や人生に行き詰まっている人は「働くとはどういうことか」「生きるとはどういうことか」「人生とは何か」などと考えるかもしれません。

 こうした「……とは何か」という問いはきわめて哲学的な問いです。「人生とは何か、生きるとはどういうことか」という問いなんてまさに哲学っぽいですよね。もちろん学問としての哲学では、こうした人生論的な問いにとどまらず、「貨幣とは何か」「法とは何か」「人間とは何か」といった理論的な問いも取り上げられます。とはいえ、どちらにおいても「……とは何か」という問いのかたちは変わりません。この問いこそ、哲学を哲学たらしめている究極的な問いだとすら言ってもいいでしょう。

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