醜男の悲恋が胸に刺さる! よしながふみが描くジェンダー観を揺るがす『大奥』

2011年9月号 COMICクロスレビュー

■マンガ好きをうならせる男女逆転時代劇

『大奥』(7巻)
作/よしながふみ
掲載/「月刊メロディ」(白泉社)
価格/650円 発行/6月28日
謎の疫病がはやり、男の人口が女の1/4となった江戸時代。3代家光から女将軍が立ち、大奥は貴重な男子を集めた女人禁制の地に。そこは、権力と愛憎をめぐる陰謀が渦巻く城だった。本巻では、7代家継の跡目争いに巻き込まれた大奥総取締役・江島慎三郎と歌舞伎役者・生島新五郎(女)をめぐる大逆事件が中心に描かれる。

【ライター・高野評】
★★★★★★★★★☆
この作品と同時代を生きてよかった!
『大奥』は、私たちの永遠の夢「とりかへばや」のその先にあるものを、巻を重ねるごとに深く抉っていく。プロローグと吉宗編のつなぎ目にあたるこの巻は、歴史の影として生きた男装女子・家光編や、普遍的な「父の娘」──女の二重基準を描ききった綱吉編などに比べインパクトでは劣るが、生島のはっとする色気や江島の静謐な横顔に胸をしめつけられる。そして、よしながふみと同じ時代を生きられてよかったとページをめくるたびに噛みしめるのだ。

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