反論はすべて予測通り!? 『抗がん剤は効かない』が巻き起こした文春のがん論争

「文藝春秋 2011年 01月号」

「以前は、『乳がんには有効な場合もある』としていたけど、今回の本では『意味がない』と言い切った。白血病などの血液がん以外の、固形がんには無意味、というのはこれまで通りです」

 近藤氏がそう結論づけた論文『抗がん剤は効かない』が「文藝春秋」の1月、2月号に掲載され"抗がん剤論争"が勃発。氏が挙げるその根拠と、寄せられた反論は次の通りだ。

 まず、抗がん剤の有効性を証明するデータには人為的操作が加わっていて、信用性が疑わしいということ。具体的には、抗がん剤が効かない場合、生存曲線は素直に右下がりになるが、抗がん剤の有効性を示すデータの生存曲線は、右側の下がり具合が緩やかになる。しかし、グラフには不自然な直線が入り、これが有効性を見いだすために操作した証拠だ、というのが近藤氏の主張だ。これに対し、「週刊文春」の誌面(11年1月20日発売号)で反論を展開した国立がん研究センター中央病院の勝俣範之腫瘍内科医長とテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの上野直人教授らは「がんと無関係の原因で死亡するケースも多いため、理想的な右下がりの形にならないことは普通で、これをもって人為的操作の証拠とはいえない」とした上で、臨床試験のチェック体制は非常に厳しく、近藤氏の挙げるような操作ができるほど甘くないと指摘している。

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.5.6 UP DATE

無料記事

もっと読む