同世代の加藤和彦が自殺 柳美里の新刊発売に思う "ゴキブリッコ純情"

──「しゃべるな!」と言われたことを、あちこちでしゃべりまくり、命まで狙われたこともあるというタカス。周囲から怒られる度に「貝になる」と誓うのだが、その放言癖はいまだ健在だ。

恒例の熟女クイーンコンテストも今年で7回目。審査員長はやくみつる。審査員として参加してくれたホリエモンが大暴走し、熟女の股間を電気マッサージ器で刺激。これにセッチーこと和泉節子さんが激怒して途中退席、代わりに倉木パパこと山前五十洋氏が乱入した。

 60~70年代は、どこかふざけてはいけないような教条主義の時代だった。そんな中、加藤和彦率いるザ・フォーク・クルセダーズが、教条主義の風潮から外れるようにテープを早回しにした「帰って来たヨッパライ」でデビューした。私はそのスラップスティックコメディ風のスタイルを、一歩引いて見ていた。

 70年を過ぎ、私はおもちゃのトミーに入社して、「ああ、会社組織というのはスラップスティックコメディみたいなんだな」と実感した。そして、「帰って来たヨッパライ」にインスパイアされた商品を売り出した。小さなぜんまい仕掛けのゴキブリが歩くおもちゃで、プロモーションも兼ねて東芝EMI(当時)と組んでテープを早回しした「ゴキブリッコ純情」というレコードを出した。今でも中古レコードでお宝コミックソングとしてやりとりされているようだ。

 たたかれたって ふまれたって
 たくましく 生きてゆく~

 そんな歌詞だった。

 時は流れ、94年の暮れ、たまたま六本木のキャンティで加藤和彦と会った。入ってすぐのバーカウンターでひとりで飲んでいた。隣しか空いてなかったのでそこに座り、バーテンダーに「同じものを」と頼んだらフローズンマルガリータがきた。

 私と加藤は30分ほど肩を並べた。

 加藤はその年の3月、妻の安井かずみを亡くしていた。彼女は実にスタイリッシュでバブルの象徴のような女だった。私にとって加藤は、楽曲がどうというより"究極にかっこいい女の夫"というイメージだ。あの程度の曲でスタイリッシュな洋服を着ていろんな車を乗り回していたというのだから、妻の才能のおかげもあるのだろう。うらやましい話である。

 キャンティのカウンターで私たちはほとんどしゃべらなかったが、加藤が「さみしい」と漏らしていたことを覚えている。当時、私もトミーを辞めて出版の道に入り、孤立無援でヘアヌードを始めた頃だった。

 加藤のことを考えると、05年に自殺した友人・ポール牧が重なる。ポール牧は借金に悩んでいた。晩年、自宅マンション近くの弁当屋へスラップスティックコメディのように明るく弁当を買いに行っていたが、実は毎日その一食だけで暮らしていた。スラップスティックコメディのようにスカして格好つけて生きた人間の末路。2人とも私のようにたたかれてもふまれても、泥臭く生きていれば……。「ゴキブリッコ純情」を加藤に捧げたい。

 さて、柳美里の、1年以上にわたって自分のはらわたをさらす思いで書いた小説『オンエア』(講談社)が発売された。初版を聞いて驚いた。上下1万部ずつだという。

 梨元勝、渡邉裕二、憲旺利之が書いたのりピーの暴露本が3冊合計約5万冊。それぞれ増刷になったというから、最終的には10万冊くらいか。"事実は小説より奇なり"ではないが、小説より暴露本が力を持つ時代が来たのかと愕然とする。時代がおもしろいのか、小説という創造物が弱くなってるのか、あるいは読み手が弱くなってるのか……。忸怩たる思いである。『オンエア』の主人公は3人の女子アナだが、もしかしたら亡くなった川田亜子の暴露本を書いたほうがこの小説より売れるんじゃないか?

 TOKYO MXの『5時に夢中!』に、柳美里のかつての担当編集者・中瀬ゆかりや作家の岩井志麻子、中村うさぎが出演している。彼女たちはスラップスティックコメディのように私生活を切り売りして稼いでいるが、柳美里は彼女たちのようなやり方を拒否し、あくまで文章で勝負し続けてきた。私が彼女にシンパシーを感じるのは、そんな不器用だけれどもたくましい、ゴキブリッコ純情の生き方をしているからである。

 それにしても、前田日明、柳美里、ジョニー大倉と、最近在日の方と仲良くしている。私はまさしく差別区別のないインターナショナルに生きている。在日と間違われても仕方がないな。しかし、この3人より私のほうがもっと突き抜けていることは間違いない。

 突き抜けているといえば、鳩山幸。彼女は女の究極の幸せの3つをやってる、不倫、略奪愛、あげまん。この人の自伝を出したら売れるだろうな。以前白髪だった髪は、外国人に好まれるように真っ黒のストレートボブにした。ほんのこの間まで一緒に『サンデージャポン』に出ていた菅直人の奥さんが、すっかりかすんでしまった。田中眞紀子も、小池百合子も片山さつきも佐藤ゆかりもぶっとんだ。期待したいのは、やっぱり田中美絵子。彼女はいい女の張り方をしている。(談)

高須基仁(たかす・もとじ)
中央大学経済学部卒業後、某玩具メーカーにて数々のヒット商品を開発。その後、紆余屈曲があって、出版プロデューサーとなり数々のヘアヌード写真集を手がける。別名、毛の商人。
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