山口雄大監督が語る! 芸人・板尾創路が映画に愛される理由

映画「板尾創路の脱獄王」公式HPより

「天然じゃなくて計算。まじめなんですよ」

 "天然""個性派"というのがたぶん、一般的な板尾さんのパブリック・イメージですよね。でも、僕の見解はちょっと違うんです。実際の板尾さんは、計算高くて緻密に物事をすえる人。もう5~6年のお付き合いですが、僕は板尾さんのことを、俳優や芸人というカデゴリーに治まらない、クレバーなクリエイター思考の人だと思っています。だから、僕の『魁!!クロマティ高校』に構成で参加してもらったように、作品の内側から入ってもらうことも多いんです。

 今回板尾さんの作品に、僕はスタッフとして参加させていただいたのですが、こんなこともありました。監督って大抵、デビュー作には自分の知り合いを出したがるもんなんですよ。板尾さんも、当初のキャスティングには仲の良い芸人さんの名前を入れていましたし。でも、登場人物や物語を作り込んでいく過程でイメージが固まって来ると、躊躇無くどんどん外して行く。それは、あくまで作品中心に考えて、作品が良くなるかどうかの判断をしていくからです。これこそクリエイター目線。そういう視点を持った板尾さんですから、監督挑戦は、必然といっていいぐらい僕には違和感もなかった。

 その作品ですが、タイトル『板尾創路の脱獄王』にある、この"板尾創路の"が重要。どっから見ても"板尾創路の"映画なんですよ。基本的に板尾さんは引き算の人。例えばあるシナリオがあったとしたら、大抵の作り手は、より面白くしようとあれこれ装飾して肉付けする。でも、板尾さんは逆で、どんどんそぎ落としていくんです。最後に残った部分だけで、そのシナリオの世界を自分らしく表現し、伝えようとする。こんな冒険は僕にはできない。そういった板尾創路が持つ才能や資質、笑いに対するこだわりや考え方が、今回の作品には凝縮されているんです。

 板尾さんは"天才バカボン"。その正気とも狂気とも言える才能には、いつも唸らされます。(談)

やまぐち・ゆうだい

1971年、東京都生まれ。映画監督。実写映像化不可能と言われる漫画の映画化にトライすることで知られる。代表作は『地獄甲子園』『魁!!クロマティ高校』など。『板尾創路の脱獄王』ではクリエイティブディレクターと共同で脚本も務めた。

『板尾創路の脱獄王』

どんなに牢に厳重な警備が敷かれようと、頑強な錠をかけられようと、見事に脱獄する囚人の鈴木。その脱獄の理由にはある目的が隠されていた。お笑いのみならず、多方面で異能を放つ板尾創路の長編映画監督処女作。國村隼、石坂浩二ら豪華キャスティングにも注目。監督・脚本・主演/板尾創路 出演/國村隼、石坂浩二ほか 公開/2010年1月16日より、角川シネマ新宿ほか©2009「板尾創路の脱獄王」製作委員会

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