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クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第52回

【クロサカタツヤ×横田明美】AIやモリカケ問題を通して行政法研究者が語る日本の行方はどっちだ!?

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●法制執務業務支援システム(e-LAWS)の概要
注:「e-LAWS」とは、法制執務業務支援システム(e-Legislative Activity and Work Support System)の頭文字を取った略称

――森友学園への土地売却をめぐり、財務省が決算書類を改ざんしていたことが発覚。上から下まで大騒ぎになっている。だが、役所が公文書を改ざんすることの本質的な問題とは、一体なんだろうか。さらには、遅々としてデジタル化が進まないアナログ大国の我が日本。その中でも紙の文書でのやりとりが多い行政機関は、実際のところどのくらいデジタル音痴なのか。行政法の専門家にホントのところを聞いてみた。

クロサカ 横田明美先生は、総務省のAIネットワーク社会推進会議【1】や、消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合【2】でご一緒しています。そんな横田先生のご専門は行政法ですが、世間を騒がしている公文書改ざん問題は、改めて何が問題なんでしょうか。

横田 まず公文書管理という観点で問題だと思うのは、行政のプロセスが後から確認できなくなっていることと、国として統治ができていないことにあまり目が向けられていないこと。これでは市民はもちろん、行政官自身も苦しめてしまう。さらに東京大学で行政法を教える先生も、以前から「受講する学生がずいぶん減った」と嘆いていました。今回の問題はそれに拍車をかけそうです。どなたかが「公文書は行政官自身を守るもの」といっていましたが、このままでは、国を支えていくシステムそのものに、優秀な人材が行かなくなる恐れがある。

クロサカ 公文書が行政官を守る、というのはどういうことなんでしょうか?

横田 公文書のひとつに稟議書というものがあります。役所が何かを決裁する必要が生じたとき、担当した役人が文書にして、それを直属の上司、そして場合によっては大臣までハンコが続きます。それは文書の内容を「見ました」という確認で、後から問題が起きた場合には「みんなが見た」という物証にもなるわけです。仮に、誰かが適当な文書をでっち上げたとしても、ハンコを押していく過程で誰かが気づくはず。だから、文書の内容についてみんなで責任を分担していることになります。電子決裁を導入しているところもあるでしょうが、基本的な考え方は同じです。

クロサカ 民間企業でも同じですね。そして我々はこうした文書をきちんと保管しています。

横田 公文書は公文書管理法という法律と細則に則って、文書の内容に応じた取扱いや保存期間が決められています。公文書管理って聞くと「難しそう」って思う人が多いですが、当たり前のことをちゃんとやりましょう、というのが公文書管理法の基本的な発想です。

クロサカ 一方、今回の問題によって、公文書の電子化が提唱されはじめています。しかし公文書の取り扱いって、現状はやっぱり紙。行政のIT化やAIの活用なんて道のりは遠い。

横田 たとえば、銀行のコールセンターでお客さんの話す内容を自動的に認識して、必要な情報をオペレーターに提示するAI活用って、もう実用化されています。これを行政機関が導入するには、実務上3つの問題があると思っています。1つ目は、そもそもAIが検索してオペレーターに提示できるだけの情報がデジタル化されていない。2つ目は、行政内部の部署や業務内容によってITスキルがバラバラなので、一律にIT化やAI化を進めると使いこなせないところが出る、いわゆるデジタルデバイド問題です。そして3つ目は……ハッキリ言って、移行のためのお金と人材の余裕がないんです。

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