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“新たな銀行ビジネス”の末路

スルガ銀行を絶賛――信用失墜の森金融庁長官、6月退任の怪情報

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アベノミクスに陰り、長官人事にも影響

財務省の不祥事発覚や、アベノミクスによる銀行業界の苦境もあり、一連の経済政策を支えてきた省庁の人事にも影響が見え隠れする。これまで無理やりにでも改革を押し通してきたが、業界から不満が噴出し、その影響もあって怪情報が飛び交っているようだ。


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女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」への投資セミナーなどを開くなどしていたスルガ銀行。ニッチなローンを打ち出して、脚光を浴びていた。

 2018年2月中旬、地方銀行のトップは、金融庁・遠藤俊英監督局長の発言に震撼した。

「自己資本対比で外貨リスク量が高い地銀に対して、米金利上昇への対応についてヒアリングを実施した。その結果、ヒアリングを行ったすべての銀行で、外国債券や外債投信が評価損となっていることを確認した。なかには、今期のコア業務純益(融資などによる金融機関の本来の収益)予想額に匹敵する水準まで評価損が拡大している銀行もある」

 アベノミクスの柱である“金融緩和”が、銀行の収益を蝕んでいる。特に、黒田東彦・日本銀行総裁が実施したマイナス金利政策で、地方銀行などは国内での収益が激減。収益源を失った地銀は、運用益を求めて外国債券や外国投信を購入した。先の遠藤監督局長の話は、これらの評価損が銀行本来の収益を吹き飛ばすほどに拡大していることを明らかにしたのだ。

 事実、地銀の経営は危機に面している。18年3月期第3四半期累計で、池田泉州銀行は外国債券投資などの失敗で82億円の赤字に転落した。上場している地銀82行(第二地方銀行を含む)のうち、57行の業務純益が減益となった。

 こうした中で、地銀には金融庁に対する怨嗟の声が渦巻いている。

MEMO『森金融庁長官』
森信親金融庁長官は、安倍晋三首相や菅義偉官房長官などからの信任が厚く、17年7月に3年目の長官続投が決まった。異例と話題になる一方で、地銀再編を迫り、反発があった。

 確かに、マイナス金利政策の中で十分な収益を上げられないのは、地銀各行の自己責任であり、金融庁――特に森信親長官はこれまで、一貫して「個々の地銀が創意工夫して、既存のビジネスモデルではない、新たなビジネスモデルを作り上げることが重要だ」と力説してきた。

 そして、森長官が新たなビジネスモデル作りに取り組む代表例として取り上げたのが、静岡県沼津市が本店の「スルガ銀行」【1】だった。同行は、地銀再生にいち早く乗り出し、さまざまな施策を取り入れ話題となっていた。だが、当のスルガ銀行は、不動産会社のスマートデイズが運営するシェアハウス「かぼちゃの馬車」の経営危機で、大きな傷を負った。

「かぼちゃの馬車」の仕組みは、オーナーが銀行ローンを組んでシェアハウスを所有し、スマートデイズがシェアハウスを一括で借り上げ、家賃を保証する。オーナーは融資を受けて物件を購入し、継続的な家賃収入で利益を得るサブリースだ。そのオーナー向け融資を実施していたのが、スルガ銀行だった。同行が、かなりあまい査定でオーナーへの融資をしていたことが、事態悪化の大きな要因ともなっている。

 その、「かぼちゃの馬車」の実態は、入居率が5割を下回り、オーナーへの家賃保証を継続できる状況ではなかった。18年1月、スマートデイズはついにオーナーへの賃貸料の支払いを停止した。

 これにより、スルガ銀行への融資の返済が滞り、破たんに追い込まれるオーナーが続出する事態となった。オーナーらで構成する「スマートデイズ被害者の会」はスルガ銀行に対し、集団訴訟へと踏み出している。

 またスマートデイズは9日、民事再生法の適用を東京地裁に申請し、受理されたと発表。負債総額は、17年3月期末時点で約66億円と見られている。

 ある地銀幹部は、「森長官は、とにかくスルガ銀行の姿勢、ビジネスモデルについて、素晴らしいと絶賛していた」と明かす。

 しかし、「かぼちゃの馬車」経営危機が発覚し、状況は一変する。森長官が絶賛していたスルガ銀行の新たなビジネスモデルは、一転して“詐欺の片棒”とまで言われるような代物だった。そこで、森長官は見事な“手のひら返し”を見せる。スルガ銀行を批判し、スルガ銀行に対して銀行法に基づく報告徴求命令(金融庁が、金融機関や金融商品取引業者に対して、業務や財務の状況に関する報告や資料の提出を命じ、検査をすること)を出したのだ。

 これには、銀行業界も開いた口がふさがらなかった。「あれだけスルガ銀行を褒めたたえたのは、森長官。森長官も“戦犯”だろう」(メガバンク幹部)との声まで出始める始末だった。これが、森長官が褒めたたえた“新たな銀行ビジネス”の末路でもある。

 森長官といえば、すでに3期(3年)にわたって長官の地位にある。00年の金融庁発足以来、3年にわたって長官の地位にあったのは、五味廣文氏、畑中龍太郎氏に続いて3人目。通常1年で交代する官庁幹部人事にあっては、極めて異例だ。しかし、最近ではシェアハウス「かぼちゃの馬車」問題の関連ですっかり評判を落とし、庁内の人望も凋落の一途のようだ。

 このため、今年6月の人事異動では、「森長官の退任は確実視され、後任には氷見野良三・金融国際審議官が本命視されている。年次からは旧大蔵省入省で昭和58年組の三井秀範検査局長が最有力だが、氷見野審議官は森長官の覚えがめでたい」(金融庁関係者)という。

 三井・検査局長は、金融庁が現在進めている、現行の総務企画、監督、検査の3局のうち検査局を廃止し、監督局に統合する組織改革で新たに発足する「局」の局長に就任するとみられている。

 また、森長官とは対立しながらも、金融検査で大きな功績のあった遠藤・監督局長は、日銀理事への転身が有力視されている。

 こうした動きの中で、日銀総裁に安倍晋三首相の盟友、黒田総裁の再任が決まったことから、同様に森長官の留任も有力視されていたが、「『かぼちゃの馬車問題』でのスルガ銀行関与で、“事実上のみそぎ”となる退任」(金融庁関係者)という見方がもっぱらだ。

 実は、17年末に森長官は辞意を表明したが、それを麻生太郎・財務大臣が慰留したという話がある。しかし、麻生大臣の慰留もむなしく、森長官は2月に菅義偉・官房長官に辞表を提出し、3月に菅長官がこれを受理したという話が流れている。さすがの森長官も、この逆風の中では長官に居座ることはできないということなのだろう。

 確かに、地銀の経営努力が足りない側面もある。しかし、詐欺まがいのビジネスの片棒を担ぐような融資スタイルが、本当に地銀に求められた新たなモデルなのだろうか――?

 まして、その詐欺まがいのビジネスを褒めたたえ、推奨することが、行政の長たる金融庁長官の姿勢としてふさわしいものだろうか? 経営が苦しい時期だからこそ、金融庁も含め、地銀は本当の地域金融のあり方を真摯に考えていく必要があるはずだ。

(鷲尾香一)

【1】スルガ銀行
「サブカルローン」や「馬を愛する人のローン」「やまとなでしこローン」などニッチで変わったローンを売り出すなどして、独自サービスを打ち出してきたスルガ銀行。ベンチャー企業家や経済系の識者などに、そのスタイルが絶賛されてきた。2016年には、31年ぶりにトップが交代した。しかし今年3月に「かぼちゃの馬車」問題が発覚し一転、批判の声が高まっている。

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