サイゾーpremium  > 連載  > 学者・萱野稔人の"超"哲学入門  > 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第43回/デイヴィッド・ヒュームの【人性論】を読む
連載
哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第43回

【哲学入門】法的決定を独占した国家のもと、人は自力救済の原理から解放され、社会が発展する

+お気に入りに追加
1709_kayano_520.jpg
(写真/永峰拓也)

『人性論』

デイヴィッド・ヒューム(土岐邦夫・小西嘉四郎/訳)/中公クラシックス/1550円+税
哲学の分野以外でも『イングランド史』を著し、フランス大使代理、国務次官などの職を務めたヒューム。本書には、そんな彼が因果論について考察した主著『人性論』抄訳と社会契約論批判『原始契約について』を収録。

『人性論』より引用
「政府に服従しなければならない理由を問われた場合、私だったら、なんのためらいもなく、そうしなければ社会が存続できないからだ、と答える。この答えは、明快で全人類にとってわかりやすいものである。」
(デイヴィッド・ヒューム「原始契約について」、『人性論』中公クラシックス所収)

 デイヴィッド・ヒュームは18世紀イギリスの哲学者です。ジョン・ロックなどとともにイギリス経験論を代表する哲学者として位置づけられています。経験論というのは、一言でいうと、経験によって人間の知識はつくられると考える立場のことです。

 たとえばジョン・ロックは、人間の知識は生まれたときにはまったくの白紙で、人間が生きていくなかでさまざまなことを経験し、知覚することで知識は形成されていく、と論じました。ヒュームはそうした経験論のなかでもとくに知覚を重視し、人間の知識は人間がさまざまなものを知覚することで抱く観念をもとに形成されると考えました。ただしそれだと、人間はそれぞれ経験することや知覚するものが異なるにもかかわらず、数学のような普遍的知識をなぜ共有することができるのか、という難しい問題にぶちあたってしまいます。哲学の歴史のなかで、ヒュームの考えを受けて、その難しい問題に取り組んだのがカントでした。

 今回はそのヒュームが国家についてどのように考えていたのかをみていきましょう。ヒュームは生前、古典派経済学の父とされるアダム・スミスとかたい信頼関係で結ばれており、またヒューム自身も自由貿易を擁護していたので、しばしば経済グローバリズムに賛成する脱国家主義者だとみなされることがあります。しかし上の引用文をみると、ヒュームに対するそうした見方はまちがっていることがわかります。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2019年3月号

欲望の美人学

欲望の美人学

乃木坂46・斉藤優里のパジャマパーティ

乃木坂46・斉藤優里のパジャマパーティ
    • 乃木坂の太陽【斉藤優里】が登場!

インタビュー

連載

    • 【園都】サウナーなんです。
    • 【平嶋夏海】美尻アイドルの偏愛録
    • 【88rising】世界戦略の真実
    • 深キョン熱愛ショック!【恭子から俺は!!】
    • 世界中で議論される【AIと倫理】
    • 高須基仁/【エロ】の匂いを消すこの国に抗う
    • 映画【盆唄】に見る人々のたくましさ
    • 【ファーウェイ】創業者の素顔を追う
    • 【ブラック・クランズマン】に思うファンクとディスコの70年代
    • 町山智浩/【バイス】ブッシュを操る副大統領
    • 厚労省の【不正統計問題】と統計軽視の代償
    • 小原真史の「写真時評」
    • 五所純子「ドラッグ・フェミニズム」
    • 笹 公人/【嵐】の夜に
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ研究所」
    • 稲田豊史/希代のマーケター【西野カナ】
    • 【アッシュ×スラッシュ】実弟が聞くキワどい話
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • ニコタマに地ビールを!【ママ友】たちの挑戦
    • 伊藤文學/【新世代ゲイ雑誌】の価値観
    • 更科修一郎/幽霊、【サイコパス】に救われたい人々。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』