>   >   > 「ライク・ア・トーキングストーン」第21回「人はなぜ【忘年会】を開くのか?」
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『林賢一の「ライク・ア・トーキングストーン」』【21】

恋バナにケツ掘られエピ……人はどんなに強烈なトークも“忘れるため”に【忘年会】を開く

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――元放送作家で、現在は脚本家として心機一転活動する林賢一が、生のトーク現場に裸一貫突入! 事務所の大看板・古舘伊知郎を始めとした先達たちが繰り広げるトークライブをレポートする。

『2016年 忘年会』

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人物:忘年会する人々
日時場所:2016年12月末@都内各所

人は忘年会でどんなトークをしているのか? 意外とそのトークは忘れられ、消え去ってしまう運命にある。2016年の忘年会をフィールドワーク的に記録してみた。


 年を忘れる、と書いて「忘年会」。実際に人は忘年会でどんなトークをしているのか? あえて注意しなければ、意外と何を喋っているか覚えていないものだ。まずは辞書的な意味をおさらいしておくと、忘年会とは「年末に、その1年の苦労を忘れるために行う宴会」であり、ウィキペディアでは「宗教的意味付けや、特定行事様式の無い日本の風俗の一種である」と補足されている。なるほど、忘年会は日本固有の催しであり(東アジアでは似た行事がある)、同ニュアンスの行事は、欧米ではクリスマスが担っているようだ。また、近代の忘年会がお祭りムードに変化したのは明治時代からで、無礼講などのキャッチフレーズで世間に広まったのだという。

 私見によると、忘年会は大きく3つに分類できる。自発的な集まりによって開催される「納会型」、交友関係や家族間で行われる「親密型」、会社仕切りの「企業型」の3つだ。こうやって忘年会について整理してみると、ただ騒ぐだけの会な気もするし、日本文化論的に語れそうでもある。そこで今回は、いくつかの忘年会を観察して、フィールドワーク的に忘年会トークを集めてみた。

 まずは東京都港区のちゃんこ鍋屋で採集した、30代OL2人組の女子忘年会(納会型)から。ビールで乾杯するやいなや、その場にはいない女友達がイケメン韓国人と付き合おうか迷っている話がスタート。「その韓国人、めちゃマッチョでスタイルもいいらしいから、エッチはしたいんだけど、やっぱり韓国人だから結婚はちょっと無理、みたいな。わかるー」と思いっきり恋バナ、しかもその場にいない人物の噂話だ。その後も、イケメン韓国人がいかに身体的魅力にあふれており、女性が性的に興奮するポイントはどこか? と議論になり、その流れでひとりが「わたし面食いじゃないと思ってたけど、そうじゃないってようやくわかった!」と謎のカミングアウト。最終的には彼女たちが結婚できない理由の指摘合戦という展開でフィニッシュ。確かに恋バナをしている瞬間、1年の苦労は忘れられる。だが、結婚できない理由を指摘し合うのは「苦」のような気もする。このケースでは「忘年=恋バナ」であった。

 続いては、新宿歌舞伎町の火鍋屋で調査した、大学時代の友人とおぼしき男2女2の忘年会(親密型)。4人は最近、旅行に一緒に行ったようで「ニューヨーク超楽しかったよね。また、行きたいね!」と、会はスタート。4人でニューヨーク? 羨ましいぞ。すると「次は誰も行ったことない都道府県、行きたくない?」と提案が。すぐさまひとりがスマホで日本全図を開き、「じゃあ、北海道行ったことない人?」とアンケートを取り始めた。手は挙がらず、次は「青森県行ったことない人?」と、次第に南下。沖縄県までこのくだりが47回きっちり続いた結果、4人全員が岐阜県、愛媛県、熊本県、佐賀県、鹿児島県に行ったことがないと判明。するとひとりが「交通費考えると現実的じゃないよね」と、ひっくり返す。一瞬、「今のくだり意味ないじゃん」の空気が流れるも、ひとりが「だよね」と乗っかり、「だから都内に近い箱根とか人気あるのか~」と急に分析家気取り。最終的には「休み合わせられるか問題」が浮上し、それぞれが日程を調整することに。忘年会というより旅行会のような気もするが、その後、「今日買った靴を見せる」ムーブや、「仕事の愚痴」合戦、「すべらない恋愛ネタ」披露など、王道展開でフィニッシュ。このケースは「忘年=未来の旅行を妄想する」だった。

 最後は、東京都中央区・月島のもんじゃ屋で行われた某会社の忘年会(企業型)を観察してみた。序盤、ある若手男性社員が「このあいだ新しい扉、開いちゃいました」と意味深な枕を繰り出す。「仕事先で知り合ったイケメンがマッサージ上手だっていうんで、家に呼ばれてマッサージしてもらったんですよ。すんごい上手で気がついたら裸で四つん這いになってて」「え、そういう話?」と驚く社員たち。「超高級なオイルをお尻に塗られて、アナルを触られたんで『それはちょっと』って拒否ったら、『大丈夫、大丈夫』って指を入れられて。で、気がついたら大きいモノが……」「ちょっと待て!」と上司。「それ、まんまマッサージモノのAVじゃねーか!」「そうすね」「そこ普通、一線引くだろ!」「いや、人生1回だし、こういう経験はココで逃したらもうないかなって、思い切って」その若手社員は異性愛者で、これまでにそういう興味は一切なかったという。あまりにも衝撃すぎ、周囲は笑うやら呆れるやら。その後のトークで、その“掘られ”に勝るエピソードが出るはずもなく、企業型忘年会は終電の時間で終了。

 今回集めたトークはどれも「1年の苦労を忘れるために行う宴会」という趣旨に沿っていた。いや、それどころか何をトークしても「忘れるため」に集約されることに気づかされた。「何でもアリな会a.k.a.忘年会」、恐るべし。そもそも、人は忘れるために生きているのかもしれない。喋ることによって、それを為すのが忘年会であり、そこで何を喋ったかすら忘れてしまうのが人間なのだ。

林賢一(はやし・けんいち)
1979年、五反田生まれ。脚本家、構成作家。「古舘伊知郎トーキングブルース2014」に構成で参加。近作はドラマ『恋とか愛とか(仮)』(広島ホームテレビ)、アニメ『脇役目線』(WOWOW)など。映画監督・入江悠主宰のメルマガ【僕らのモテるための映画聖典】内での「映画のカット数を数える」連載は5年目に突入。

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