連載
「テクノロジーから見る! 業界アウトルック」No.02

ネットも”現場”と化したヒップホップ界”擬装”したラッパーたちが歌うリアリズム

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もはやどんな事物もテクノロジーと無関係には存在できないこのご時世。政治経済、芸能、報道、メディア、アイドル、文壇、論壇などなど、各種業界だってむろん無縁ではいられない──ということで、毎月多彩すぎる賢者たちが、あの業界とテクノロジーの交錯地点をルック!

[今月の業界と担当者]
ラッパー業界/磯部 涼(音楽ライター)

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“黒ギャルアイドルラッパー”を自称するMINT氏に「アー写を送ってもらえますか」とメールしたら、このイメージが届いた。最新作『ミンちゃん』(ファイル)を発表したばかり。

 クラブやストリートを神聖視するヒップホップという文化。ラッパーたちは、そんな“現場”で大仰に握手しながら、ローカルな絆を深めてきたように見える。ところが現在、ネットもラッパーたちの現場となった。そして、リアルな自己を顕示していたはずの彼らは、擬装する!

「(言いことは)なんもない はい終了!」――先日、リリースされたラッパー・MINTのアルバム『ミンちゃん』(12年/ファイル)は、そんな消極的極まりない宣言から始まる。「言いたいことがあるからアルバムをつくったのだし、ましてやラッパーになったのではないのか!?」と思わず突っ込みたくなるが、“ラッパー”というパブリック・イメージを裏切るようなこのラインは、文字通り、序の口である。

 00年代前半、MINTは関西を代表するラップ・グループ、韻踏合組合に参加していた。同グループは現在に至るまで、定期的に地元のラッパーを集めた大規模なイベントを開催、サイファーの場となるショップ経営にも携わったりと、まさに、ヒップホップの特徴であるローカリズムに根差した活動を続けている。しかし、04年、MINTは早々に脱退。その理由は、韻踏のアルバム『Critical 11』(02年/Pヴァイン)に収録されたソロ・ナンバー「ミン to the ちゃん」の、以下のラインから見て取れる。「神戸市内遠くに住む 引きこもりMC決して遠出しない/みなさんと2度と会うコトはナイ/目が合うとドア閉じるアンチアウトドア」。また、『ミンちゃん』で、30代半ばにもかかわらずいまだ実家住まいのMINTは、自宅2階の自室のことを“ジタニカ”と呼び、「1日中ずっとジタニカでダラダラ過ごしていたいだけ」とラップする。彼がこだわるのはローカリズムよりさらに局地的な、言わばベッドルームイズムなのだ。

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