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『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第95回

着実に複雑に状況悪化する’23年、絶望的な壁を乗り越える術をいかにして僕らは得るのか?

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通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

もしやと思われていたロシアによるウクライナ侵攻が現実になり、原油価格高騰でガソリンも値上がり、安倍元首相が暗殺され、日本政府のコロナ対策も転換期を迎え、藤井聡太五冠が史上最年少として生まれ、大谷翔平が偉業を達成し、サッカー日本代表がワールドカップ大活躍と、教科書に載るレベルの出来事でめまぐるしかった2022年。来年は本当にどんな未来がまっているのか?

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クロサカタツヤ

1975年生まれ。株式会社 企(くわだて)代表取締役。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティングや政策立案のプロジェクトに従事。07年に独立、情報通信分野のコンサルティングを多く手掛ける。また16年より慶應義塾大学大学院特任准教授(ICT政策)を兼任。政府委員等を多数歴任。


●収入と労働時間の分布

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(出典)内閣府「日本経済2021-2022」より

――この連載も開始から丸9年が経過し、2023年はついに10年目に突入です。今月はクロサカさんと担当編集とで、年末に恒例となった1年の振り返りになります。

クロサカ 今回で第95回ですから、23年中には100回も達成できる見込みなので、ひとまずはそこを目標にしましょう。それにしても10年は長い。連載開始時に2歳だった子が、小学校を卒業するんですから。

――実はこの連載、これまでゲストの方々は、みなさん1回ずつしか登場されていません。つまり、年末の振り返りを除いても、80人超の方にご登場いただいていることになります。

クロサカ 「初回縛り」については特にここ2~3年、心が折れそうになるくらい大変なんですが、一方で緊張感の維持になっています。サイゾーの連載のためという意識が、新しい人に会いにいくモチベーションになっているんですね。歳をとったと自覚することが多いので、意識的に動かないと新しい人にもなかなか会わなくなってくるんですよね。

――タイムリミットのギリギリまでゲストが決まらず、やきもきしたこともありました。

クロサカ 毎回ホントにすみません。ただ、歳をとると気心が知れた人との付き合いだけで仕事も生活も成立してしまうんです。それはとてもありがたいんですが、安住してはいけないなと。大体のことはわかっているような気持ちになるんですけど、実は全然わかっていないんじゃないかという危機感を今年は強く感じていました。

――何かきっかけがあったんですか?

クロサカ 具体的なきっかけはなかったんですが、この1年を振り返ると、世の中が複雑になっていることを強く感じるようになりました。世界に目を向けてみれば、未来の教科書に確実に載るようなすごい出来事が連続して起きている。そしてもはや「今日も何かあったね」という、つまり正常化バイアスでこれが当たり前と感じるように、我々は狂っているんだろうなと。

――一方で、そういう出来事を私たちはニュースとして楽しみ、炎上すらエンタメとして消費するだけで終わってしまっています。

クロサカ そうした炎上や炎上狙いのマーケティングが続く一方で、「アテンションエコノミー【1】が敵」だということの合意が近づいてきたと思います。ただ、それは理屈として「悪いことですね」と合意しているだけであって、現実の振る舞いとしては「アテンションエコノミーは敵だ」ということをバズるよう面白おかしくツイートすることしか考えていない。

――メディアの立場からすると、バズることで少しでもPVが伸びるので、止められない事情もあります。炎上とかでなく、例えばAIとかで自然なレコメンドってできないものでしょうか。

クロサカ 今ですら、アップルウォッチに「運動してください」と言われて、皆「うるせえな」って思っているわけで、AIやテクノロジーは決して万能じゃない。ただ、健康という領域に限れば、医療費の削減は必要なこと。なので、国の政策や企業のマーケティングだけじゃなくて、グーグルなどのプラットフォームが、もっと進化することはあり得ます。

――ただ、イーロン・マスクによるツイッターの買収などを見ていると、この先はより混迷を深めていきそうです。

クロサカ あまりにいろんなことが起きすぎているから、ちょっと前のことは「だよねー」と受容してしまいがちです。もちろん、立っているだけで目が回るくらいの激変が連続する中、すべての出来事に対して鋭い感受性のままに直面すると、壊れてしまいます。ただ、このままだと仮にウクライナに核兵器が使われたとしても、「僕、言いましたよね」とか言う人がたくさん出てきてしまう。ミャンマーのクーデター、香港のデモ、ボコ・ハラム、タリバン。皆さん覚えていますか。

――あまりにすごいスピードでいろんなことが起きすぎて、すべてに向き合ったら確かに消耗してしまいます。それもあって、自分の力で立ち止まることが必要なのに、それすら難しい時代なのかもしれません。例えば、山平さん【2】は、すこし立ち止まることで自分の生き方を考え直した。鳥海先生【3】山本先生【4】インフォメーションヘルス【5】は、人々が立ち止まって考えることの手助けをしようとしているのではないでしょうか。

クロサカ 気づいた方々は自らの生き方を変えたり警鐘を鳴らしたりしていますね。一方でメディアや広告業界はみんな「立ち止まらなきゃ」って走りながら叫んでいる感じです。グーグル等のビックテックは広告ビジネスを通じてデジタルメディアの生殺与奪を握りつつあり、独立性や健全性を兵糧攻めで脅かしうる。でもメディアや広告代理店はそれに気づいていないか、何もできない。よく黒幕扱いされる、日本を代表する広告代理店でさえ、グーグルとは交渉可能だと楽観視してそうです。でもこれは契約条件の話ではなく、プラットフォーム支配の問題です。

――テレビを中心とした日本のメディアビジネスというプラットフォームを作った人たちなのに、わからないものでしょうか。

クロサカ その仕組みを作った人たちはもう引退しているので、仏の構造は理解しても魂の入れ方・動かし方はわからないかもしれませんね。ただこれは、彼らだけの話ではなく、日本企業のあちこちで散見されます。あまりにオッサン的な発言なので正直言いたくはないんですが、「この会社にいてこんなことも知らないの?」と思うことがある。これじゃ、SNSでJTC(Japanese Traditional Company)、つまり伝統的日本企業と揶揄されても、仕方ない。

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2022年12月/2023年1月号

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