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『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第96回

ネット歴30年のエキスパートと一緒にメタバース、Web3、ポストスマホについて語ってみた

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――通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

イーロン・マスクがツイッター買収で世間を騒がせ、コンビ二バイトがイタズラを投稿したら、すぐにテレビでニュースになるほど、すっかりネットとリアルがくっついた2020年代。日々、ニュースサイトとかSNSとかメルカリとかYouTubeとかで、ネットざんまいなんて読者も多いはず。でも、Web3とかメタバースとかNFTとか、次々と新しいものが登場してきて、ちょっと混乱気味にも見える。結局、これからネットはどうなるの?

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[今月のゲスト]
森永真弓(モリナガ マユミ)

博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所上席研究員。通信会社を経て博報堂に入社し現在に至る。ソーシャルメディア活用などのデジタルマーケティングに長く関わってきたネットのヘビーユーザー。近著は『欲望で捉えるデジタルマーケティング史』(太田出版)


●インターネット利用率の推移

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(出典)総務省「通信利用動向調査」各年版を基に作成

クロサカ 今月は博報堂DYメディアパートナーズの森永真弓さんをお招きしました。森永さんはコンテンツとデジタルマーケティングの専門家として活躍されていますが、新卒で最初に入ったのは通信会社だそうですね。

森永 千葉大学工学部のデザインにいたんですが、周りの同級生が「デザイナーとして生きていく」という情熱を持っているのに、自分はそれほどではないことに気づいてしまって。それと、当時の千葉大学にはマニアックな先生がいて、珍しく全学生がインターネットとクレイのスパコンが使える環境だったんです。そこで色々覚えた結果、インターネットブームの時期に、ホームページ制作のバイトの口がたくさんありました。

クロサカ 僕もその頃SFCで、似たような環境でした。小室哲哉のウェブサイト制作では、かなりもうけさせてもらいました。

森永 IT系メディアでもバイトしていたこともあって、インターネットに関わる仕事に興味を持っていました。でも、新卒タイミングでは大きな会社に入って社会勉強をしたほうがいいと思って就職活動をはじめたんですが……。

1998年の長野オリ・パラのボランティアをやっていたせいで、就活に大きく出遅れました(笑)。長野から戻ったら就活戦線がほぼ終わっていて、受けられる会社がかなり絞られていたんですね。「就職できないかも」と焦っていたところに、通信会社から内定をもらえて「いきます」と即答しました。そこでしばらく技術職として働いていたのですが、B2Bの仕事にそこまで思い入れられなかったのと、同時期にネットブームが始まっていろんな会社がインターネット担当の中途募集を始めたのを見て、転職活動をした形です。私は飽きっぽいので、仕事の中身がどんどん変わったり、社内転職も同然のように仕事の内容が変わるなど、組織や業態変更にともなって勝手に仕事のほうが変わっていく感じが面白かったので、広告会社は向いていたんだと思います。

クロサカ 波瀾の人生ですね。僕と年代的にもカルチャー的にも、すごくかぶっているんですよね。最初のインターネットブームの頃は、あらゆるところが浮かれまくっていて、ただの学生がこんなに稼げるのはマズいなと思ったので、三菱総研に入ったんです。その結果、今でも通信関係の仕事に深く関わることになった。

森永 新卒で入ったのが通信会社だったのは本当に幸運でした。IT系の情報は本もセミナーもたくさんありますし、独学できることが多いですけど、インフラ系は業界に入らないと学べないし、情報が得られないことが多いんですね。通信インフラと、それを担っている国家レベルに大きな会社が、どういう論理で動いているのかを学べたのは、すごくラッキーだったと思います。

クロサカ 確かに通信って難しいです。ネット民の僕らは慣れてしまっているけど、PCをネットにつないだり、自宅に回線を引くだけでも、実は大変です。かつてのインターネットブームの頃、Windowsの設定ができたり、ADSLモデムの設定ができたりするとモテるっていうのがあったじゃないですか。でも、よく考えてみたら「男がモテる」っていう言い方をしていたことがまず、男性中心の考え方だったんだなと、今になって思います。

森永 当時はそんな感じでしたよね。私はスポーツ観戦が好きなんですが、90年代から2000年代って「野球が好き」って言うと、オジサンが「○○って選手を知っている?」とか「スコアブックつけられるの?」とマウントを取ってくるんですよ。でも、インターネット上だと性別を消せるんですよね。最初に野球のことで仲良くなって、同志として認められた後にオフ会で会うと「あ、性別そっちなんですか」ということになっても、マウントは取られない。なので、コミュニケーションにおいて性別がハードルにならないという経験は、ネットならではの恩恵だったと思います。

クロサカ 恥ずかしながら、その話は初めて知る視点です。言われてみると当然のことなんですが、僕も男カルチャーの中にいたんだと思い知りました。

森永 今、メタバースで女の子のアバターを使うオジサンが多いじゃないですか。それをわからない人からは「ネットで美少女だと“偽っている”」と誤解されがちですが、ユーザサイドは「リアルでのオジサンである自分も、メタバースで美少女として振る舞っている自分も、どちらも自分だ」という感覚ですよね、別に偽ってない。私自身、SNSでお餅が溶けたようなキャラクターのアイコンを長年使っていますが、あれって無性別なんですよね。30年近く使い続けているけれど、思い返してみればリアルのプロフィールを消したかった気持ちの表れだったのかもしれません。

クロサカ 性別や年代、地域などで、社会的にカテゴリ分けされる問題がずっとありますが、それがうっとうしい、つらいという人たちが少なからずいる。それを突破したいという、潜在的な気持ちに対してテクノロジーが可能性を与えてくれるのであれば、飛びつく。かつて自分も、そういうものを感じていたのに、すっかり忘れてしまっていたような気がします。

森永 私が面白いと思うのが、メタバースのユーザーは7~8割方が男性なのに、アバターの8~9割が女子ということです。理由をよくよく聞いてみると、「女子キャラクターのほうがコミュニケーションを取りやすい」っていうんですよ。裏を返せば、現実世界で日常的に友達を作ったり、コミュニケーションを取るときに、リアルな男の身体はインターフェースとして堅くて邪魔だ、と捉えている男性の感覚の現れといえるのかもしれない。

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