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『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第88回

政策は企業がつくる時代!? 官僚出身のロビイストに聞いた“政治がうまい”企業の特徴とは?

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通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

――パブリックアフェアーズなんて耳慣れない単語が、一部のテック企業界隈ではやっているそうだ。小難しく感じるけど、企業なり団体なりが、自分たちが活動する上で、既存の法律とぶつかってしまったり、逆に法律がないために必要以上に萎縮してしまったりすることがある。そんな場合に、政府に働きかけて適切なルールに変えたり、ルールをつくったりするのがパブリックアフェアーズ。実は最近、日本にもパブリックアフェアーズを仕事にする人や会社が増えているって知っていますか。

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[今月のゲスト]
宮田洋輔(ミヤタ ヨウスケ)

株式会社ポリフレクト 代表取締役。経済産業省にてIT・デジタル政策を担当し、ヤフーに転職。政策企画本部でデジタル関連政策や、シェアリングエコノミーなどの新たなビジネス領域に関する政策提言を担当。2018年にヤフーを退職し、ポリフレクトを創業。


●ルールメイキングに対する日本企業の意識

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(出典)経済産業省「2019年版ものづくり白書」

クロサカ 今月のゲストは宮田洋輔さんです。宮田さんは経済産業省からヤフーを経て、2018年にポリフレクトという会社を始められました。いわゆるロビイングやパブリックアフェアーズ【1】という領域でお仕事をされていらっしゃいます。官僚からネット業界、そして起業というキャリアを選んだ理由や、その背景についておうかがいします。

宮田 もともと経済産業省の情報経済課【2】にいたのですが、ここでは新しい政策をどんどんつくりだすことが仕事だったんです。椅子に座っているだけでは何も思いつかないので、いろんな人にヒアリングをしていろんな知恵をもらいながらやっていました。

クロサカ ちょうど10年くらい前のことで、その頃から仕事でご一緒していましたよね。

宮田 その頃、日本企業と外資系企業との差を強烈に感じたことがありました。日本企業は、こんな課題がある、とは言ってくれるんですが、「じゃあ、どうしたら良いと思いますか?」と尋ねると、「とりあえず、決めてくれさえすれば、その内容については問わない」というのが典型的な回答でした。一方で、外資は「この課題があるから、こうしろ」と具体的な提案をしてくるんですね。その提案を、また日本企業にぶつけてみると、「それでいいから、わかりやすく決めて」としか言わない。こういう状況をずっと見ていて、「日本企業、大丈夫か?」と不安を感じていました。

クロサカ 情報経済課で関わりのある外資系って、要はGAFAみたいなところですよね。そうした企業には、官僚出身の政策立案能力を持った人が多くいると、私もはたから見ていて感じていました。

宮田 彼らは、役人に対してどう言えば理解するのかよくわかっているので、私自身も納得してしまうことが多かった。でも、それを続けていくと、外資系企業に都合の良いルールばかりになって、長期的には日本企業が淘汰されるかも、と不安を覚えたんですね。もちろん、外資系企業が日本で活躍すること自体が悪いわけではないのですが。

クロサカ 実は私自身も、外資系企業が関心を持たないことは、役所が動かなくなって必要なルールがつくれなくなるかもしれない、と懸念していました。行政に限らず一般に、仕事しやすい人たちと仕事すると、仕事しにくい人との仕事のリソースは減ってしまうのが、人間の性(さが)なので……。

宮田 新しい政策をひたすらつくっていると、面白いテーマをわかりやすく持ってきてくれると、役人としては飛びついてしまうのは、私自身もありました。相手も元官僚で初対面でも議論が噛み合うため、安心感を持ってしまうというのもありました。

クロサカ お互いに共通認識があると話しやすいし、話が噛み合うのはそれ以上に大きいですよね。

宮田 当時、日本企業で具体的な政策を提言してくるのはヤフーか楽天くらいでした。突っ込んだ議論をしようとすると多くの日本企業が「お任せするんで決めてください」ってなるところ、最後まで「ああすべき」「こうすべき」と言ってきたのはその2社でした。

クロサカ その2社には、確かにそういう動き方ができる人がいますよね。

宮田 ただ、楽天の担当者は官僚出身でしたが、ヤフーの担当者は違ったんですよ。だから、良いテーマを持ってくるんですけど、それを政策として磨いていくところでうまく議論が噛み合わないことが多かったんですよね。じゃあ、自分がその役割を担ってもいいんじゃないかなと思ってヤフーに転職したんです。

クロサカ 転職を知ったときは私も驚きましたが、それよりも周囲にすごく影響を与えたと思うんです。優秀な若い官僚が、民間に移って自ら足場を作り、役人とは違う立場から政策を提言して業界全体を盛り上げようとするのは、私にとってすごく新しい動きに感じられたんです。私の理解だと、それを企てて実際に採用に動いたのは、そもそもヤフーで政策企画本部【3】を立ち上げた、宮田さんの上司になった方ですよね。

宮田 そのとおりです。私がこんなことを言うのもおこがましいんですが、役人だった立場から見て、正直なところその上司は、面白いテーマを持ってくるけど、細かいニュアンスのやりとりやスケジュール感などでやりにくさを感じることも結構ありました。これは、自分が何とかしないといけないかもしれない、と思ったのがヤフーを選んだきっかけのひとつです。

クロサカ 有名な方なので私もよく知っていますが、いわゆるネット企業の多くの人たちが、ヤフーの政策企画本部のそうした動き方から、多くのことを学んだと認識しています。宮田さんが独立されて今のようなお仕事をされていることも含めて、今の時代につながる礎をつくられたんじゃないでしょうか。

宮田 私もそうだと思います。その上司は、もともと法務担当だったんですが、ヤフーの法務部はものすごく忙しいんですよ。日々大量の業務をこなしつつ、それだけでは会社として足りないと考え、政策提案が必要だと気づき、さらにその組織を自分でつくり上げた。まさに、ゼロからイチを生みだした、本当にすごい人です。

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