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『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第83回

【クロサカタツヤ×朱喜哲】倫理なくしてビジネスも成功なし!? 今の時代になぜAI×倫理が必要なのか哲学者に聞いてみた

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通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

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●人工知能(AI)のイメージ(日米)
(出典)総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(平成28年)より作成

――企業が個人のプライバシーを侵害していたり、大規模な個人情報流出事件が起きたりするたびになんかモヤモヤしませんか。というのも、勝手に自分の情報を集められたり、そういった情報が流出したりするのが、感情的に気持ち悪いのは確かだけど、じゃあ金銭的とか身体的な被害が発生していない場合は、何が問題なのかイマイチ説明できないから。だから、法律違反だとか無責任企業だとか騒ぐしかできない。でも、倫理ならばそれを問題としてきちんと整理できるんだって。

クロサカ 今月のゲストは朱喜哲(ちゅ・ひちょる)さんです。朱さんは哲学者として言語哲学やネオプラグマティズムを研究されているだけでなく、電通の社員としてデータを用いたビジネス開発やコンサルティングをされています。

 専門は言語哲学で、言語の構造やコミュニケーションについて考えてきました。とくに「理由」が専門なんですけど、理由って実は暗黙的なんです。「なぜ?」に対して「こうだから」と言われると納得してしまいますが、具体的にどうすれば理由という機能の作用を明示化できるのっていうところに関心を持っていた。デジタルのビジネスは、日常的な言葉での説明が難しいですよね。例えば、スマホのアプリで位置情報を求められることがありますが、具体的に企業が何をしようとしているのかユーザーからはわからない。そういう言葉にされていないものを言語化して、生活者の日常言語でもわかるようにすることは、哲学がデータビジネスに貢献できるところです。

クロサカ デジタルサービスは技術自体が複合的だから、作っている側ですら全体像はよくわかっていません。3月に発覚したLINEの問題【1】もそうですよね。

 この事件は、メディアも何が論点かわかっていなかった。だから報道も漠然とした不安を煽るしかできなくて、吟味されないまま人々は「なんか怖い」という感情だけで事件を処理してしまう。これは、ビジネスをする側にとっても大きなリスクです。

クロサカ 法的な面は、コーポレートガバナンスの問題として処理することはできます。ただ、それは企業側の理屈で現象に対する応急処置をしただけ。ユーザーは、具体的に何が起きたのかわからないままです。情報を提供する側も、ユーザーも理解できていないので、今私たちは何に従って動いているのかわからなくなっている。

 プライバシーの問題はこれまで、ユーザーから「同意」を取ることでOKとされてきました。ところが欧州では、形式的に同意を取るだけでは解決できないという議論が盛んです。内実をともなった同意が成立するためには理解が必要で、そのための説明ができているのかということが論点になっています。こうした領域では「ELSI(エルシー)」という考え方が有効です。ELSIは「倫理的・法的・社会的な課題(Ethical, Legal and Social Issues)」の略称で、新しい科学や技術が社会に及ぼす影響のこと。デジタルビジネスが発展するなかで、法的問題や社会的課題だけじゃなくて倫理的な課題について考えよう、というのが欧米ではコンセンサスになっています。

クロサカ 2年前の2019年3月号の当連載で、「AIはホントに脅威? 世界中で議論が巻き起こっている『AIと倫理』の問題」というテーマで、弁護士の三部先生を招いてAI倫理についてうかがいましたが、そこからさらに状況は進んでいて、あらゆるビジネスの現場で倫理が問われるようになりつつあります。

 日本語で「倫理」というと漠然としているんですよね。日本では、倫理観は文化や国、時代によって相対的なものだと思われがちです。そのため、たとえば欧州発のGDPRが普遍的な価値を訴えていることの重みと、そこに日本も巻き込まれていることがわかっていなくて、それが国際競争上のリスクにもなっている。

クロサカ 三部先生も「倫理に気をつけないと日本は危ない」とおっしゃっていました。

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