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第2特集
<特別企画>迫力のステージルポ

アジアン旋風を巻き起こす〈88rising〉世界戦略の真実

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リッチ・ブライアンのヒットにより、〈88rising〉は世界的に注目されるように。

 以上のようにアメリカではアジアン・ムーブメントが一定の広がりを見せているわけだが、そんな中で日本の音楽はどのような立ち位置にいるのか? 〈88rising〉ともっとも密接な関係にある日本人アーティストといえば、今回の日本公演に出演し、昨夏アメリカでの〈88rising〉ツアーにも帯同したラッパーのKOHHということで間違いないだろう。

「彼はロック・スターみたいな存在だ。だけど、誠実だし、賢くて優しいし、人間的にすごく優れている。だから誰でもKOHHのようになれるわけじゃない」

 ミヤシロがこのように絶賛するKOHHは、2010年代に頭角を現した天才R&Bシンガー、フランク・オーシャンの楽曲「Nikes」(16年)に参加したことがある。

「フランク・オーシャンが認めたアーティストってことは、“ただのイケてるヤツ”じゃなくて、“かなりイケてるヤツ”なんだよ」

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ハイヤー・ブラザーズのライブ中のMCで、メンバーのMaSiWeiが中国語でフロアに語りかけると、中国語の歓声が上がった。

 しかし、KOHHのほかにミヤシロから挙がった日本人アーティストの名前は、宇多田ヒカルだけだった。とはいえ、「具体的な名前は覚えていないけど、日本には心に刺さるアーティストがたくさんいる」と話し、日本の音楽のリサーチを怠っているわけではなさそうだ。「たまたま聴いてイイなと思った音楽を拾っていくのが俺のスタイル」と述べるように、これまで発掘してきたアーティストたちとの出会いで構築された網の中で、たまたまKOHH以外の日本人アーティストに出くわす機会が少なかったのかもしれない。

 なお、KOHHといえば、韓国人ラッパーであるキース・エイプのMV「It G Ma」(15年/その後、キース・エイプは〈88rising〉に所属)にフィーチャリングで参加し、このMVがバイラル・ヒットしたことで、アメリカをはじめ海外のヒップホップ・シーンで名前が知られるようになった。ミヤシロは「KOHHは俺たちのコミュニティにいたから、発掘することができた」と話すが、“俺たちのコミュニティ”とは要するにアメリカのヒップホップ界のことだろう。〈88rising〉はまさに、グローバルなポップスの中心地となっているそのシーンと、アジア系のコミュニティをつなげるような存在にフォーカスしてきたことで、新しい場所を獲得できた。しかし、このスペースに日本人アーティストは入っていっているのだろうか――。冒頭で述べた〈88rising〉のライブで感じた戸惑いとは、“新しいアジア”を観ることができた単純な喜びと、そこから“日本”がすっと抜け落ちてしまっているかもしれないという不安が入り混じったものだったのだ。

 もっとも、日本の音楽業界は長らく自国のマーケットばかりに目を向けてきた。そのため、それぞれのキャラクター性を生かしながらも、グローバルな音楽トレンドを消化/昇華している〈88rising〉の面々のような若いアーティストが登場しづらいのかもしれない。しかし、〈88rising〉の日本公演により、“新しいアジア”の波を強烈に認識させられたアーティストや業界関係者、リスナーは少なからずいるだろう。この波を追うにせよ、もしくはまったく別の角度から独自の道を歩むにせよ、アジア各国やその先に広がるグローバルなシーンを音楽活動の視野に入れる者は徐々に増えていくのではないか。そして、いつか日本の多くのアーティストが今回のライブのような光景を生みだす日が訪れるかもしれない。

(取材・文/和田哲郎)
(写真/西村 満)

和田哲郎(わだ・てつろう)
編集者、ライター。ヒップホップをはじめとした音楽やファッションなど、世界の最先端カルチャーに関するニュースを配信するウェブメディア「FNMNL(フェノメナル)」を運営。wardaa名義でDJとしても活動。


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