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第2特集
<特別企画>迫力のステージルポ

アジアン旋風を巻き起こす〈88rising〉世界戦略の真実

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今回の日本公演に出演し、〈88rising〉アメリカ・ツアーにも帯同した日本人ラッパーのKOHH。

 ライブの前日に話を聞くことができたミヤシロは、この4年間について「手当たり次第とりあえずやってみようという姿勢で始めたけど、成功するにつれて〈88rising〉をより良くしていきたいという責任感が生まれてきた」と振り返る。

 つまり、当初から“アジア”を強く打ち出すという今の形を想定していたわけではないのだが、“成功”のきっかけとなったリッチ・ブライアンについて次のように話す。

「『Dat $tick』はいい曲だったけど、アメリカ人にはジョークみたいに感じてしまった部分もあったんだ。ラッパーのリアクション・ビデオがあって、その後にリリースした『Glow Like Dat』(17年)でようやくちゃんと評価されたと思う」

 なるほど、いかにもアジア人/アジア系に見えるリッチ・ブライアンがアメリカのギャングのようなリリックを歌う「Dat $tick」は、「俺たちの文化をバカにしてるのか?」とアフリカン・アメリカンの反発を招くこともあった。一方で、「Glow Like Dat」では等身大の少年らしい恋心をラップし、それによってアーティストとして正当に評価されたのである。

 この背景として、アメリカにおける人種の問題にも着目しなければならない。例えば17年、インド系のラッパーNAVが「アフリカン・アメリカンのラッパーだけでなく、自分たちもNワードを使用する権利がある」と発言した際、大きな批判を受けた。というのも、“ニガ”などのNワードは、アメリカの奴隷制度時代に白人が黒人を蔑視する意味で用いた言葉がルーツにあり、現代ではアフリカン・アメリカンだけが使う俗語であって、それ以外の人種が使うのはタブーだからだ。このような人種間の複雑な関係性があることもあって、アジア人/アジア系のアーティストがアメリカのヒップホップというゲームの内部には存在しないとみなされる風潮は根強い。

「アジアのヒップホップがアメリカでうまく受け入れられるのは、本当に難しいことなんだ。どれだけラップや曲が良くても、アジアというだけでほかの人種から叩かれたりするしね」

 だからこそ、アメリカのヒップホップ・シーンに風穴を開けた〈88rising〉は、アジアの本国にいる者以上にアメリカに住むアジア系移民に対して、大きくてポジティブなインパクトを与えたのではないだろうか。

 さらに、そんな〈88rising〉に限らず、アメリカではさまざまなジャンルでアジアン旋風が巻き起こっている。周知の通り18年、K-POPの防弾少年団(BTS)がビルボード・アルバム・チャートで1位を獲得した。BLACKPINKも彼らに続く存在として認知を高めている。また、同年、主要キャストにアジア系の俳優だけを起用した映画『クレイジー・リッチ!』(原題『Crazy Rich Asians』)が、全米で異例の大ヒットを記録した。

「あの映画はとても重要だと思っているんだ。アジア系の観客の動員があったことで、全米規模のヒットにつながったんだからね」

 K-POPについては「〈88rising〉とは方向性が違う音楽」と述べつつも、ミヤシロは各領域で自身のレーベルと同期したような動きが起きていることを歓迎しているようだった。

新しいアジアの波に乗れずにいる日本


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