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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第129回

『ソーリー・トゥ・バザー・ユー』――高給が欲しけりゃ白人口調で営業を!労働SFが描く暗黒郷

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『ソーリー・トゥ・バザー・ユー』

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黒人の電話営業マン、カシアス・グリーンは、ガールフレンドのデトロイトと同棲中。営業成績はイマイチだが、「白人の口調で電話をかけろ」という同僚の声に従ったところ、営業マンの才能に目覚めることに。だが、彼の会社は典型的なブラック企業。あまりの労働条件の悪さに社員は労働組合を立ち上げ、企業を糾弾するが、カシアスはお構いなしに従順に働き続ける。そんな姿を見たデトロイトは彼の元を離れ、やがてウォーリーフリー社がカシアスを引き抜こうとするが、同社には恐るべき陰謀が……。
監督・脚本:ブーツ・ライリー、出演:ラキース・スタンフィールド、テッサ・トンプソンほか。日本公開未定。

 去年、アメリカで大ヒットし、アカデミー賞でオリジナル脚本賞を受賞した『ゲット・アウト』は、白人ばかりの郊外住宅地を訪れた黒人青年を主人公にしたホラー映画だった。

 彼はパーティで同じ年頃の黒人青年と会うが、彼は黒人独特の言い回しや仕草を理解しない。その脳は白人の老人の脳と入れ替えられていたからだ。

 脳移植された青年を演じたラキース・スタンフィールドが、再び白人の言葉をしゃべる映画『ソーリー・トゥ・バザー・ユー(お忙しいところすみません)』が、製作費320万ドルの低予算ながら、5倍近い1500万ドルを稼ぎ出してヒットしている。

「お忙しいところすみません」とは、電話セールスの切り出し文句。スタンフィールド扮する主人公・カシアスはテレマーケターだが、電話の向こうのクライアントは、カシアスの声を聴いただけで電話を切ってしまう。

「白人の声を使え」。

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