サイゾーpremium  > 連載  > 稲田豊史の「オトメゴコロ乱読修行」  > オトメゴコロ乱読修行【38】/女はなぜ皆【星野源】を欲するのか?

――サブカルを中心に社会問題までを幅広く分析するライター・稲田豊史が、映画、小説、マンガ、アニメなどフィクションをテキストに、超絶難解な乙女心を分析。

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「女子はだいたいEXILE(系)が好き」と言えばきっと怒られるが、「女子はだいたい星野源が好き」と言ってもあまり怒られない(気がする)。それくらい、日本人女性は猫も杓子も星野源が好きだ。

 2018年、そんな星野の国民的人気が改めて証明された。国民的人気アニメ『ドラえもん』の映画版『映画ドラえもん のび太の宝島』の主題歌に、星野が起用されたのだ。というわけで今回は、星野源に心酔するオトメゴコロを、『のび太の宝島』の作品性と国民的劣等生キャラ・のび太の属性を補助線に考察したい。今月号と来月号の前後編で「星野源好き女子分析」をお送りする。

『のび太の宝島』は、太平洋上に新しく出現した新島が「宝島」だと踏んだのび太たちが冒険の旅に出る物語だ。過去38作すべての映画ドラを鑑賞した筆者からすると、これほどまでに「全方位に気配りした」映画ドラはかつてなかった。

 感動誘発シーンのこれ以上なく親切な配置。忍耐力のない子供たちも飽きさせないアクションやギャグの連打、スピーディな展開。うるさ型のドラえもんマニアも大喜びの、過去のドラ映画オマージュや原作小ネタ挿入。親御さんたちも安心の「親子の絆」テーマ。評論家が原稿を書きやすい「エネルギー問題」モチーフ。サブカルおじさんにも気を回した『新世紀エヴァンゲリオン』の碇一家こすり、『天空の城ラピュタ』のドーラ一家こすり、そして若干の富野イズム。「具・全部入り」で多様なニーズに応え、どんな属性の客も置いてけぼりにしない、行き届いた気配りの塊。あらゆる客に対して“やさしい”作りなのだ。

 この全方位型気配りの立役者こそ、同作の脚本を担当した川村元気氏である。川村氏と言えば興収250億円以上を稼ぎ出した『君の名は。』(16年)のプロデューサー。童貞気質男子の御用達作家だった新海誠の作風に「全方位型気配り」という魔法をかけ、卑屈な童貞マインドの持ち主だけでなく、ごく普通の一般大衆にも共感できる(あらゆる客に“やさしい”)仕様にチューニングした張本人だ。

 そして『のび太の宝島』に帯びる「全方位型気配り」と「あらゆる客に“やさしい”」イズムは、星野源が愛される理由そのものである。

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