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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第109回

『ハミルトン』――なぜ“建国の父”のミュージカルはトランプを怒らせた?

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『ハミルトン』

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17世紀後半、独立戦争の総司令官ジョージ・ワシントンの副官を務めたアレキサンダー・ハミルトンの半生を描くミュージカル。私生児として生まれ、孤児として育ったハミルトンは、革命を信じ、軍隊に入隊、独立戦争を戦った。戦後、法律家となった彼は祖国のために働くが……。

監督・脚本ほか/リン・マニュエル・ミランダ


 今回だけ、映画ではなく、ブロードウェイのミュージカルについて書きます。

 11月18日、ニューヨークはブロードウェイのリチャード・ロジャーズ劇場で上演中の『ハミルトン』の客席に、インディアナ州知事マイク・ペンスがいた。『ハミルトン』はアメリカ建国の父のひとり、アレクサンダー・ハミルトンの生涯を全編ヒップホップで歌い上げたミュージカルで、トニー賞11部門を独占、ピュリッツァー賞にも輝いた大ヒット作。チケットを取るのは不可能に近く、一番後ろの席でも5万円以上で転売されているほどだ。

 そして、マイク・ペンスは、この10日前の大統領選挙で勝利したドナルド・トランプの副大統領候補だ。ペンスに気づくと観客からはブーイングが飛んだ。なぜなら、『ハミルトン』は、移民排斥を掲げ、白人労働者階級の支持を集めたトランプに真っ向から挑むミュージカルで、アメリカ人役を全員、黒人、ヒスパニック、アジア系と、非白人だけで固めているのだ。

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