サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > 【小日向文世】『アウトレイジ』が変えた草食系俳優の狂気への憧憬

――映画、ドラマで常に作品の屋台骨を支えている男、小日向文世。主役もこなす、日本を代表するバイプレイヤーに、出演作を中心に「ヤバい映画」について聞いてみた。

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(写真/細倉真弓)

 やっぱり「ヤバい映画」と言われると、出演した『アウトレイジ』【1】の話になってしまいますね。ヤクザっていう一般の人のルールの向こう側で生きている人間を描いている点でタブーに挑んでいるし、「すぐ隣に死がある」という孤独感がここまでリアルに感じられる映画は、ほかにないと思います。

 僕が演じたマル暴の片岡ってヤツも、刑事のくせにヤクザの面々以上に人として破綻していますよね。ヤクザの事務所で組長の大友(ビートたけし)を殴って、ザワつく子分に「逮捕するぞ」って立ち回ったり、顔見知りのヤクザ同士が抗争をするように仕組んだり……。これはカットされましたけど、『ビヨンド』のほうでは、中野英雄さん演じる木村というヤクザの子分を焚きつけて、敵対する組に乗り込ませたりもしてるんです。どれもバレたらヤクザに殺されますよ(笑)。片岡ってのは、生死の境界線がよく見えない男みたいですね。もちろんフィクションなわけですけど、自分で演じながら「こいつ壊れてるな~」って笑える瞬間がありました。ただ、こういう人格が破綻した人間の役って、意外に入り込めるんです。役者って、自分から遠い役ほど大胆にできるものです。

 でも『アウトレイジ』のクランクインの日、いきなり大友の子分に囲まれるシーンが迫力あって、あれは本当に怖かったですね。そこで、たけしさんを殴るシーンがあったんだけど、僕は草食系ですから、人を本気で殴ったことなんかない。まず、たけしさんに「構えてみて」って言われて、ファイティングポーズを取ってみたけれど、ものの1秒で「(稽古を)つけてやって」って、言われちゃいましたからね(笑)。たけしさんはボクシングの経験があるから、動きが全然違うんです。ケンカしたら、ものすごく強いんだろうな……。実際のたけしさんは本当にシャイで温厚で、撮影現場で声を荒らげることなんて絶対にないんですけどね。

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