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磯部涼の「川崎」【第七回】

【磯部涼/川崎】スケボーが創り出すもうひとつの川崎

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日本有数の工業都市・川崎はさまざまな顔を持っている。ギラつく繁華街、多文化コミュニティ、ラップ・シーン――。俊鋭の音楽ライター・磯部涼が、その地の知られざる風景をレポートし、ひいては現代ニッポンのダークサイドとその中の光を描出するルポルタージュ。

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深夜、川崎駅近くの某所でヴィデオ撮影を行う大富たち。

 最終電車が去ると、川崎駅周辺にはもうひとつの世界が立ち上がる。ついさっきまで帰宅者でごった返していた東口は静まり返り、地下道の入口は路上生活者たちのベッドルームと化す。隣接したショッピング・センターのショーウインドウの前ではダンサーたちが練習に励み、テラスへと続く階段では外国人市民が座り込んで缶ビールをあおる。彼らは、まるで、昼間の世界では使い道が決めつけられている場所を、夜の暗闇に紛れて思い思いにリノベートしているかのようだった。

 しかし、その様子を疎ましく思っている人間もいるようで、弁当入りのビニール袋をぶら下げた中年男性は不愉快そうに一瞥をくれながら階段を上っていったが、彼はテラスに出たところでふと足を止めた。コォォォォォン。背後からアスファルトを削るような音が聞こえてくる。男性が訝しげに振り返ると、脇をものすごいスピードで、スケートボードに乗った若者が通り過ぎた。唖然としていると、続けさまにもう1台。今度はヴィデオ・カメラを片手に持っている。先頭の若者は巨大な縁石をオーリーでもって軽々と飛び越え、そして、次に見えた縁石の端に飛び乗って、デッキでスライドしようと試みたところでバランスを崩し、派手に転がった。「ああ、ちくしょう!」。若者が痛みと悔しさをこらえながら、真っ暗な空を仰いでいると、もうひとりが滑り込んでくる。「惜しい惜しい! もう1回、やってみよう」。そこは、人の目を盗んで真夜中にだけ姿を現す、幻のスケートパークだ。

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