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法社会学者・河合幹雄の法痴国家ニッポン【36】

現場の刑務官が思う死刑の“軽さ”

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法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

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未執行死刑囚漸次増加中
年々増加している日本の未執行死刑囚。2014年には3名、直近10年(05~14年)で年平均5・6名の死刑が執行されたのに対し、新たに死刑が確定した者の数は14年6名、直近10年の年平均は13・7名である。結果、本文の通り、現在129名もの未執行死刑囚が存在し、収容先の拘置所にとって大きな負担となっている。

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『凶悪―ある死刑囚の告発』(新潮文庫)

 死刑に関する論考の第3回目となる今回はいよいよ、謎多き死刑制度の中でも特に分厚い秘密のベールに包まれてきた、死刑執行の現場を取り上げます。今日、その実態に関しては、長年死刑執行に携わった経験を持つ元刑務官・坂本敏夫の著書や、死刑囚・刑務官の日常や葛藤を描いた郷田マモラの漫画『モリのアサガオ』(双葉社)の刊行などにより、かつてと比べればはるかに多くの正確な情報を得られるようになっています。そうした情報に接したとき、おそらく多くの人は、制度とはいえ「人間を殺す」という行為そのものの持つ“重さ”、あるいは日本の刑事司法において、他の刑罰と比較したときの死刑の突出した“重さ”を痛感することでしょう。

 しかし、私はあえて問いたい。死刑というのは、あらゆる面において本当にそれほど“重い”ものなのでしょうか? 私は職業がら死刑執行に直接携わる人たちと接する機会が多く、現場を知る者にしか語りえないリアルな話をよく耳にします。そうしたとき、私はしばしばこう感じるのです。死刑というのはある意味において、われわれ一般が思うほど“重い”ものではなく、むしろ“軽い”と表現すべき場合もあるのではないか、と。もちろんそれとは逆に、ある点において死刑は、一般に考えられているよりずっと“重い”刑罰だ、と感じることも多々ある。要するに、現場と一般社会とでは、死刑に関する“軽重”の認識に大きなズレがあるわけです。

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