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連載
神保哲生×宮台真司「マル激 TALK ON DEMAND」 第103回

「盗聴法」の改正は司法利権の肥大化が本当の目的

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――ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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『新盗聴のすべて―個人情報防衛マニュアル』(三才ブックス)

[今月のゲスト]
足立昌勝[関東学院大学名誉教授]

――安保法案がメディアで問題視される中、ある法律の改正案が提出された。1999年に大議論を巻き起こした「盗聴法」である。数多くの刑事事件の不正や問題点を受けて導入が決まった取り調べの可視化と引き換えに出てきた改正案だったが、ここにきて司法権力の拡大へと発展した。マスコミでは黙殺されているこの問題の本質とは……。

神保 今回は犯罪捜査のための通信傍受に関する法律、通称「盗聴法」の改正をテーマにお送りします。宮台さん、同法の成立から16年たち、またこのテーマで番組を作らなければならなくなりましたね。

宮台 残念です。一方で安全保障に関する集団的自衛権の問題が話題になり、他方で特定秘密保護法がすでに通っている状況です。盗聴法が成立した1 999年の第145回通常国会にも、周辺事態法、国旗国歌法、憲法調査会設置法などさまざまな法案が上程されました。当時の僕たちは、これらがワンパッケージであることを問題視しました。

 具体的には、冷戦体制終焉後、もはやアメリカが西側の盟主である時代が終わったのだから、日米安保を解消方向で見直すのかと思ったら、違った。アメリカが戦争をするとき、「それが周辺事態なら」日本が兵站(後方支援)を提供することを可能にするための、内外の法整備というパッケージです。

 僕はそのとき、これを日本の国家権力による横暴だとする左翼を批判し、むしろ国家権力の弱体化ゆえに、アメリカの国家権力に従属することを前提にした、情報権益の争奪戦が、行政から民間に至るまで進みつつあるのだと分析しました。99年段階の分析と同じものが、どうも今回も該当しそうなのです。

神保 まず、99年の参議院法務委員会の映像をご覧いただきます。


公明党・大森礼子参院議員(当時) TBSの『ニュース23』という番組で、「アメリカとの比較」として通信傍受法の特集をしておりました。「日本の法案の問題点」としてボードに書かれていたのは、「令状発布の条件」「最小化措置」「報告義務」この3点です。そして、「日本では『恐れがある』というだけで令状が申請できる」「日本は歯止めが利かないんだ」ということを主張されているのです。法務省はこれをどうお考えですか?
法務省・松尾邦弘刑事局長(当時) 「恐れがある」だけで令状の申請ができるという放送自体は、前提について初歩的な誤りがある。そのほかにも何点か誤りがございますので、法務省としてはこの報道に対して訂正の申し入れを即刻行うつもりであります。


神保 当時、自民党が提出した盗聴法の法案には濫用を招く恐れがあり、多くの国民もその点を懸念していました。盗聴というのは、盗聴されている側がその事実を知ることができないという特徴を持っているので、濫用を防ぐための「最小化措置」があらかじめビルトインされていないと、知らない間にやりたい放題になってしまう危険性があります。オリジナルの法案には反対論が強すぎると考えた自民党は、公明党の主張を受け入れる形で両党で修正案を出すことにしました。しかし、修正案でも濫用のリスクは解消されていなかったので、私は警察による盗聴の濫用が問題となっていた米ニューヨーク州の取材して、なぜ自公の修正案でも最小化措置が不十分なのかを問うリポートを当時筑紫哲也さんが司会を務めていた『ニュース23』で放送しました。

 今、ご覧いただいた映像は、その放送の翌日に公明党の議員が国会で当時の法務省の松尾刑事局長への質問という形で、必死になってリポートの内容を否定させている時のものです。国会でやり玉に挙げられたことでTBSは番組内容の訂正に追い込まれ、その後、どのメディアも盗聴法を批判しなくなりました。結果、この約1カ月後に盗聴法案は可決してしまいます。そして再び16年後の今国会で、盗聴法の改正案が上程され、可決することが確実視されているようです。99年に可決した盗聴法は審議の過程でさまざまな批判を受けたため、多くの制約が課されたものでしたが、今国会で提出された法案は、その時に課された制約をほぼ丸ごと取り除いたような内容です。何よりも99年との一番の違いは、今回はメディアの関心が安保法制に集中していることもあり、盗聴法案についてはほとんど報道がないことです。そこで今日はその中身を見ていこうと思います。

 ゲストは関東学院大学名誉教授の足立昌勝さんです。足立先生は99年から盗聴法の問題点を指摘されてきました。16年が経過して改正法案が出てきたことについて、どう感じておられますか?

足立 「懲りもせずにまたか」という思いです。法制審の特別委員会で「基本構想」というものが出たのですが、「政府原案が正しくて、限定されたほうが間違っている」という書き方を平気でしています。

神保 自民党にとっては16年前に修正を強いられた原案を、今回ほぼそのまま出してきたと。あの時、法務官僚としては政治的な状況ゆえに、彼らとしては不本意な修正を強いられたということになるのでしょう。ただ、押さえておかなければならないのは、今回の盗聴法改正案を含む刑事司法改革というのは、もともとは検察や警察の不祥事や冤罪事件が相次いだことを受けて、刑事司法制度を改革しなければならないという理由からスタートしていることです。

 郵便料金不正事件や志布志事件、足利事件といった冤罪事件が相次ぎ、民主党政権下で「検察の在り方検討会議」が設立されました。ここには元検察官の郷原信郎さんやジャーナリストの江川紹子さんも参加し、取り調べの可視化に最大の力点が置かれました。警察も検察も、取り調べが録音録画されていないことが、高圧的な取り調べや不透明な司法取引、自白の強要などの温床となっているというのが共通認識でしたが、その後の議論の場が法制審議会の特別部会というところに移ると間もなく、取り調べを可視化するのなら、その見返りに捜査権限を拡大せよという警察側の要求が前面に出てくるようになりました。そして、検察・警察改革に対する世の中の関心が冷めるのに合わせるかのように、捜査権限の拡大要求はエスカレートし、今回の盗聴法の改正案の提出につながっています。

足立 13年1月に「刑事司法制度の基本構想」が取りまとめられましたが、それ以前に「新時代の刑事司法制度特別部会」が立ち上げられており、そこには郵便料金不正事件で罪に問われかけた村木厚子さんや映画監督の周防正行さんが参加、問題点を共有すべく長い自由討論を行っていました。しかし、同時に警察、検察、裁判官も議論を進めており、基本構想を取りまとめたのは法務省の幹事です。そして、次の会が開かれるまでの一週間ほどの間に裏取引があり、最終的には全会一致で基本構想が通ってしまった。そういう流れで「可視化」から焼け太りした内容になったのでしょう。

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