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出版界 ホンネとウソとウラ話 第14裏話

もう限界!儲からない書店に三行半を突き付ける大企業 書店崩壊のXデーはもう間近?

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『書店ガール』(PHP文芸文庫)

「リブロ池袋本店(東京)が西武百貨店池袋本店から撤退。跡地の候補はブックファーストか、三省堂書店か」

 書店のビッグニュースで出版業界がざわつくなか、新たな書店のリストラ話が浮上した。京王グループの京王書籍販売が展開する啓文堂書店が、41店あった店舗を15店閉鎖して26店にまで縮小するうえ、20人の希望退職者を募集しているというのだ(2015年3月に青葉台店、稲城店、代田橋店を閉鎖し、現在は38店)。

 啓文堂書店といわれても出版業界外の人、とくに関東以外の人にはなじみがないかもしれない。だが、2008年の八王子通り魔殺人事件の事件現場になった書店といえば、痛ましい話ではあるが、ご記憶の方も多いだろう。

 その啓文堂書店の2014年度の売上が約90億円。前年度よりも8億円近く減収しているうえ、書籍販売業は赤字になっているという。その赤字を解消するために、不採算店などを閉鎖し、人件費を減らして黒字化を目指すというのが今回のリストラ策のようだ。

 しかし、ある出版社の営業幹部は言う。「今の社長は、どうも書店業への関心が薄いようだ。専門書関係の出版社を集めてリストラ策を発表したときも、『リストラして黒字化せよ』という親会社からの指示をただ実行するためだけに来た人だなという印象だった。前社長は、積極的に業界づき合いをし、出版や書店について熱く語る人だった。そんな人がいなくなったら、こんな状況になった。もしかしたら、Xデーが近いのかもしれないな」

 「Xデーとは」と聞き返すと、「東五軒町のケース」とだけ答えられた。

 出版界の隠語で東五軒町とはその所在地からトーハンを指す。一方の日販はお茶の水と呼ばれている。

 そう、彼が推測するXデーとは、啓文堂書店の身売りのことなのだ。実は、同じ鉄道会社で書店を持つ阪急電鉄は12年、子会社のブックファーストをトーハンに売却したのである。

「事業譲渡において、事業が黒字であるのは最低条件。あくまで憶測にすぎないが、啓文堂は借入れなどの負債も含めて財務状況を健全化したうえで、書店業を売却しようと考えているのではないだろうか。主帳合取引の日販は、書店の買収には積極的ではないようにみえる。オリオン書房(東京・立川)やリブロを支援したのはむしろ異例なこと」(前出の営業幹部)

 ここ数年、書店業を他企業に売却する動きが目立つ。なかでも、大日本印刷による丸善、ジュンク堂書店、文教堂の子会社化はその最たる例だろうが、ファミリーブック(群馬)はゲオホールディングス、明屋書店(愛媛)はトーハンなど、身売りの例はまだまだある。彼らがそう判断する最たる理由は、本の売上が減っていくだけの先行きの暗い書店業界で、経営を維持していくことがかなり難しいからである。一言でいえば、やるだけ赤字で儲からない――からだ。

 詳しくは触れないが、粗利率が2割程度で売上が下がっているなか、家賃や人件費などの固定費を支払うと利益はほとんど残らない――というのが書店経営の実態なのである。客がほとんど入っていないが、営業し続けている小規模の書店をたまにみかける。これは外商や教科書販売という別収入があるからこそ、成り立っているのである。また、大手書店がこの規模を維持できているのは、出版社や取次からのバックマージンがあるからだ。ほかにも、「家族経営で、家族への給料を支払うことがないからやってこれた」、「自社物件で家賃を払う必要がないから何とかやってこれた」など、特殊なケースでない限り、書店の店売でメシを食うことがかなり困難になっているのである。

 新聞やネットで、町の書店が消えていくという記事を目にする。しかし、今は大企業の子会社書店のリストラや身売りにまで、事態は進展している。さらに、成長し続けるアマゾンジャパンですら、紙の本の売上がもう踊り場にきているといわれている。本の売上が減少し続ける環境では、専業書店の未来は暗い。このままでは救済する企業すら出てこなくなってしまうかもしれない。おそらく、そうなったとき、そして支援してくれたはずの企業が書店を見放したとき、そのときこそが書店大崩壊のXデーなのかもしれない。

(文/佐伯雄大)


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