――芸能界を去るイケメンのセカンドライフはどこに? 西森路代が"元イケメン芸能人"のその後を追う!
「ユリイカ」(青土社)が「イケメン・スタディーズ」特集を敢行、イケメンファンと批評読者の双方を驚かせた。
ここしばらく、「ユリイカ」の特集「イケメン・スタディーズ」のための原稿にかかっていた。私が書いたテーマは、「イケメンはなぜ怖いのか」というものである。特にアラサーからアラフォーの微妙な年頃にあると、「イケメンとかあんまり詳しくないんですけど~」という枕詞を意味なくつける人が多いのはどういうことか。いや、自分も使うことがあるが、あれは「私はイケメンを消費するような段階まではまだ来てないのです」という言い訳である。
逆に、イケメンと同等に渡り合える若い世代や、もはやイケメンからどう思われようが関係ない「オバサン」と自覚した世代、もしくは腐女子のようにイケメン(二次元含む)と自分を完全に切り離して見られる場合には、イケメンは怖くなくなる。つまり、自分とイケメンの距離感と、「イケメン怖い」という気持ちは関係しているのだ。
このことを考えていたとき、そういえばすごく似ているものがあると思った。それは「女子」という言葉だ。この「女子」という言葉は、もともとは女性全般を指すもので、大人の女性が使っていけない言葉ではない。ただ、「子」という漢字があることや、「女子会」「女子力」などのイメージが独り歩きして、なんとも使いにくい言葉になっている。
しかも、「女子」という言葉を嫌がるのは、「イケメン」を怖がる層とほぼ同じだったりする。ということはどういうことか。「女子」という言葉を自称する人に「いい年してみっともない」と言うのも、イケメン好きの女性を揶揄するのも、男性と、「ああはなりたくない」と言う女性たちである。
アラサーやアラフォーの多くの女性たちは、かなり長い期間を、こうした目線から逃れるために費やしているのである。なんかもっとほかのことに使えないものだろうか……。
西森路代(にしもり・みちよ)
1972年、愛媛県生まれ。フリーライター。アジア系エンタメや女性と消費に関するテーマなどを執筆。著書に『Kポップがアジアを制覇する』(原書房)、『女子会2.0』(共著/NHK出版)など。