テレビが「古典」にした 時代劇は、如何にして世界を席巻できたのか?

エミー賞18冠を達成したDisney+『SHOGUN 将軍』(2024)、グローバルランキング首位を獲得したNetflix『イクサガミ』(2025)──立て続けにトレンドの中心となる配信発の「時代劇」。なぜ今、時代劇は盛り上がりを見せているのか。業界関係者らの話に耳を傾けてみたい。

配信発の時代モノが世界的な大ヒット

Netflix『イクサガミ』で第30回釜山国際映画祭の開会式に出席する岡田准一。(写真/Woohae Cho/Getty Images)

2025年11月にNetflixで配信されるや世界中で話題を集めた『イクサガミ』は、廃刀令が施行された明治時代を舞台に、武士たちが命と誇りを懸けて殺し合いに身を投じる物語。火薬が爆発する中で斬り合う激しい演出や、デスゲーム&謎解きの要素を含んだ構成は、時代劇になじみのない層の心をもガッチリつかんだ。

2024年には、俳優・真田広之(65)がプロデュース兼主役を務めた『SHOGUN 将軍』がエミー賞で同賞創設以来最多となる18冠を受賞するなど海外で高く評価。英作家ジェームズ・クラヴェルが1975年に出版した同名小説が原作で、徳川家康をモデルとした架空の戦国武将・吉井虎永が主人公の歴史ドラマだ。50年の時を超えて大幅にブラッシュアップされ、ロマンとリアリティが高い次元で融合したエンタメ作に生まれ変わった。

「ネオ時代劇」は本当に「ネオ」なのか

偶然か、必然か。この2作が同時期に海外評価を受けたことで、時代劇の新風とみる向きもある。「ネオ時代劇」あるいは「新・時代劇」──だが、業界歴40年の映画宣伝プロデューサー・
竹内伸治氏は「〝新風〟は別に今に始まったことではなく、時代劇は常に新たな表現を模索してきた」と話す。

「映画は世に連れ人に連れ。その時々の世情を追うものです。そして時代劇はずっと『まだ見たことがないもの』をつくり続けてきた。言ってみれば、毎回〝ネオ〟なんです」(竹内氏)

映画史をひもといてみると、日本は映画技術の取り込みが早かった。世界初の映画『工場の出口』(1895)がフランスで上映後、1897年頃には歌舞伎の演目を撮影した記録映像を中心に、映画興行が行われていたとされる。日本初の「物語映画」は、牧野省三監督『本能寺合戦』(1908)。日本映画は時代劇とともに歩みを始めたのだ。

無声映画時代、阪東妻三郎主演『雄呂血(おろち)』(1925)は「剣戟(チャンバラ)ブーム」の火付け役に。「時代劇の父」と呼ばれる伊藤大輔監督の『忠次旅日記』三部作(1927)は激しい殺陣や大胆な撮影技法を駆使し、アクション映画の可能性を切り拓いた。

トーキー(発声映画)時代に入ると、歌や音楽を取り入れた作品が登場。マキノ雅弘『鴛鴦歌合戦』(1939)は剣戟が一切なく、歌唱によってドラマが紡がれるミュージカルで、「オペレッタ時代劇の傑作」と評される。同時期、伊丹万作『国士無双』(1932)、『赤西蠣太』(1936)など風刺の効いた喜劇もつくられた。竹内氏は「いろんな作り手が、斬新で面白く、楽しいものを取り入れたいと切磋琢磨する空気感があった」とみる。その意識は、細かな演出にも宿る。

「たとえば、現代的なセンスとテンポの良い作風で知られる娯楽映画の巨匠・沢島忠は、いわゆる〝時代劇〟の定型を覆そうとして、江戸時代の道中物に、ナンセンスギャグをふんだんに組み込みました。大衆受けを狙う過程では、あえて削ぎ落とされた史実要素もあります。代表的なのはお歯黒。見た目が汚いということで、次第に消えていきました」(竹内氏)

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