全くの偶然を結びつけることで物語が生まれる――【水道橋博士】が見せたトークの星座

――元放送作家で、現在は脚本家として心機一転活動する林賢一が、生のトーク現場に裸一貫突入! 事務所の大看板・古舘伊知郎を始めとした先達たちが繰り広げるトークライブをレポートする。

『水道橋博士 岡宗秀吾 MIDNIGHT TALKSHOW』

人物:水道橋博士と岡宗秀吾
日時場所:2018年1月31日 @代官山 蔦屋書店

芸人・水道橋博士とテレビディレクター・岡宗秀吾が、奇しくも同日、同じ出版社、同じ値段で書籍を出版。その記念に行われた深夜のトークイベントに潜入。


 同じ日に、同じ出版社から、同じ値段で、同業者の書籍が発売される。これはただの偶然だろうか? 水道橋博士はこう言った。

「この本は双子です」。

 水道橋博士『藝人春秋2 上 ハカセより愛をこめて』『藝人春秋2 下 死ぬのは奴らだ』の上下巻と、テレビディレクター岡宗秀吾の初単著『煩悩ウォーク』の話だ。どちらも去年11月30日に文藝春秋から発売され、税込みで1728円という値段までもまったく同じ。これはただの偶然だろうか? と繰り返さざるを得ないのは、この「偶然」というキーワードが、2人による出版記念トークイベントの裏テーマになっていたからだ。だがその「偶然」に辿り着くまで、道草を食うのが彼らの流儀であるかのように、華麗な雑談からイベントはスタートした。

 MIDNIGHT TALKSHOWと名づけられたこの日のトークイベントは、開始時間が22時と遅めで、良い意味でゆる~い空気が充満しており、雑談には最適の空間だった。例えば「貴乃花は最近、松村邦洋のモノマネに自分を寄せている」という雑談。ヒトはモノマネされると、そのモノマネに寄せられてしまうというのだ。津川雅彦は、松村による自分のモノマネを最初に見た時は「全然似ていない」と思ったらしいが、最近では「津川雅彦をモノマネする松村邦洋」を模倣するようになっている、と指摘。確かにそうかもしれない。そうなってくると、もはやオリジナルがどちらなのか判断がつかなくなってくる。そもそも、ヒトは誰かの真似をしなくては生きられない。赤ちゃんは生まれてから、周囲を模倣することによって成長していく。これはただの雑談なので、ヒトが何かを真似してしまう、という根源的なトピックを突き詰めることはせずに、さらっと笑いにする水道橋博士はなんだかクールだった。

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