「流しの写真屋」のいる風景

「題名不明(刺青のヤクザ)」(1983年) (c)渡辺克巳写真社団

「演歌の殿堂」として知られた新宿コマ劇場が2008年に閉館し、今年4月、跡地に新宿東宝ビルがオープンした。歌舞伎町の象徴のような建物も、時代の流れには逆らえなかったのだろう。

 この劇場の全盛期にあたる60年代から70年代にかけて、カメラ片手に新宿の街を撮り歩いた男がいた。「流しの写真屋」として知られる渡辺克巳である。岩手県・盛岡生まれの渡辺は、20歳で旧国鉄を辞め、1961年に上京、65年から新宿で「1ポーズ3枚1組200円」でポートレイト撮影を請け負う仕事を始めた。歌舞伎町から新宿二丁目あたりまでカメラ片手に街をぶらぶら歩き、頼まれれば写真を撮って現像した写真を翌日届けるという手筈だ。

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