【社会学者・太田省一】さんまからマツコへ……変わるテレビとコミュニケーション

――テレビというメディアの変革期に伸びてきたマツコは、トリックスターなのか、時代の申し子なのか? 社会学的視座から考える。

社会学者

太田省一
おおた・しょういち 1960年生まれ。社会学者。専攻は社会学、テレビ論。著書に『社会は笑う・増補版』(青弓社)ほか。最新刊『中居正広という生き方』(同)が7月末に刊行された。

『社会は笑う・増補版: ボケとツッコミの人間関係』(青弓社ライブラリー)

 マツコさんがテレビバラエティに引っ張りだこの理由として、2つの特徴を持っていることが挙げられると思います。

 まずひとつは、彼女がテレビに対して批評家的な目を持っていることです。かつてのテレビの制作現場は、「お茶の間で、1台のテレビを囲んで観ている」という視聴者像が想定できていた。しかし80年代頃から徐々に、想定する視聴者像を変えていかなければいけない、となってきた。

 それでもそこから20年余り変えられずにきたものが、いよいよ視聴率も下がってきて、どんなものなら観てもらえるのか、作る側が真剣に考え始めている。マツコさんは、視聴者代表としてそれを教えてくれるんですね。最初の冠番組『マツコの部屋』(フジテレビ)がわかりやすいですが、スタッフが作ってきたVTRに対して本気で怒るという、テレビに文句をつける芸をやっていた。今テレビを観ている人が求めているものは何か、作り手側にわからせているわけです。

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