【元読売巨人軍球団代表/清武英利】読売記者にパ・リーグ贔屓の記事を書かせる"志"ある雑誌

清武英利(きよたけ・ひでとし)
1950年、宮崎県生まれ。立命館大学卒業後、読売新聞社に入社。社会部記者として、警視庁、国税庁などを担当。04年に読売巨人軍球団代表兼編成本部長に就任し、11年からは、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を務めた。著書に、『「同期の桜」は唄わせない』(ワック)など。


【1】「Sports Graphic Number」
文藝春秋/80年創刊/530円
隔週木曜日発行の総合スポーツ雑誌。沢木耕太郎や乙武洋匡などの著名なライターの記事が多数掲載され、特集のほか、選手へのインタビューや対談などを中心に誌面構成されている。

──2011年に起きた「清武の乱」。その当事者である元読売巨人軍球団代表・清武英利氏が昨年、山一證券の破綻の背景に迫った『しんがり』(講談社)、元特攻志願兵を追った『「同期の桜」は唄わせない』(ワック)を上梓した。ジャーナリストとしての活動を再開した同氏が選ぶ、戦う雑誌とは?

 私はおもしろい雑誌より、戦う雑誌にカネを払いたいと思っています。

 キース・ピータースンの小説に、新聞記者のこんなセリフがあります。「われわれの仕事は秘密を暴くことだ」。雑誌には、そんな新聞よりもさらに上を行ってもらいたいんです。そして、何年経っても捨てられないような雑誌に出会いたいんですよ。

 実際に、ずっと保管している雑誌があります。「Sports Graphic Number」【1】の創刊号もそのひとつ。ノンフィクション作家・山際淳司さんが、詳細かつ臨場感溢れる視点で日本シリーズを描いた連載「江夏の21球」に代表されるように、それまでのスポーツマスコミの常識を覆す革新的な内容の雑誌だったんです。

 そもそも私は、スポーツマスコミには、選手達の実相をもっと書いてほしいんです。例えば、僕が球団代表(GM)時代に創設された育成制度で獲得した山口鉄也投手。彼はもともとメジャーリーグのルーキーリーグでプレーしていて、帰国してからは公園でひとり、壁当てをしながら練習していた選手なんです。それが今や、3億円プレーヤー。本人はあまり話したがりませんが、そこに至るまでの惨めな苦労、心のひだのような部分を、追ってほしいですね。

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