『よいこの黙示録』etc.――マンガ家たちはなぜ自殺したのか? 最期の作品に隠された”遺言”

――今年発売された『THE DOG RACE~青山景初期作品集~』をはじめ、自殺したマンガ家を偲んで、追悼文やその自殺の経緯などと共に発行される書物は注目を集める。そこには、「自殺」というドラマチックな展開への、版元や読者の期待がうかがえてならない。ここでは、マンガ家の遺作をもとに、人々が「自殺」に惹かれる理由を読み解いていきたい。

インド旅行から帰国後、『ぢるぢる日記』に突然登場したオウム。わざわざ「故村井氏」と固有名詞も出している。

 2011年10月、マンガ家の青山景氏が自身のツイッターに自殺をほのめかすような投稿をした数日後、自宅で首をつって死亡しているところを発見され、ファンに衝撃を与えた。「イブニング」(講談社)にて連載中だった『よいこの黙示録』【1】は好評で、期待が寄せられていた中での出来事だった。

 過去を振り返っても、投身自殺をした山田花子氏(92年)や『おじゃる丸』の犬丸りん氏(06年)、首つり自殺をしたねこぢる氏(98年)らをはじめ、多くのマンガ家が自らの命を絶っている。作品は評価され、仕事も順調に見えた彼らがなぜ「自殺」という道を選んでしまったのか。死の直前まで描き続けていた作品から、その真意を読みとることはできないか――「ハタイクリニック」院長でドラマ『ATARU』(TBS)の医事監修を行った精神科医、西脇俊二氏に分析を仰いだ。

「心療内科ではよく、患者さんに家(Home)、木(Tree)、人(Person)を描かせて、そこから心理状態を探る『HTPテスト』というものを行います。今回も、彼らの作画の変化から、その心理状態を読み取ることを試みましたが、作画のプロであり、編集者の意図も反映したマンガでは、困難でした。しかし、実は私もそうなんですが……特にエッセイマンガだった山田花子さんの『魂のアソコ』【2】や、ねこぢるさんの『ぢるぢる日記』【3】を読んでいると、彼女らは“アスペルガー症候群”だったのではないかと思える節が見受けられたんです」

 一般に、「空気が読めない」「応用が利かず決まった作業しかできない」などの症状が報告されているこの疾患。西脇氏はまず、山田氏の『魂のアソコ』に収録されていた、日常生活の段取りを事細かにまとめたメモ資料に注目する。

「アスペルガーの患者さんに対し、日常の作業の手順を事細かに作成して実行するということを指導しますが、まさに彼女は、自らそれをやっていた。彼女は自殺する直前に、『精神分裂病』、今で言う『統合失調症』と診断されて入院していましたが、それ以前にアスペルガーの兆候があり、自分なりに、なんとか社会に適応できるように頑張っていたのではないでしょうか」

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