宮崎学が撮る新世代の野生動物

「タヌキの土管マンション」  (c)宮崎学

 毎年秋になると冬眠を控えたクマが民家の近くに出没し、人間が襲われたというニュースをよく耳にする。宮崎学は野生動物が通りそうな場所に無人の赤外線ロボットカメラを設置し、その生態を観察してきた写真家だ。この方法で野生動物の姿をレンズに収めるには、まずけもの道を見つけ出す必要がある。宮崎は彼らが残したわずかな痕跡――有刺鉄線に引っかかった毛、地面に残された糞や足跡、草木の形態、食べカス、匂いなど――からその行動を想定し、警戒されることなくけもの道を通る野生動物の姿をカメラに収めている。そうしたけもの道はよほど注意しないと発見できないのだが、宮崎は狩人のように適切な場所にカメラを設置し、時に彼らをその前に誘導する。最先端の撮影機材と狩猟という太古からの知を融合させているかのように見える。たとえ自然が相手であっても、どのような写真が撮れるかは長年の経験と観察によってある程度は「想定内」なのだ。

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