【ライブ映像の新視点】──ポストYouTube時代に見るべき演奏のドキュメント

──ミュージシャンが演奏する動画なんてYouTubeでいくらでも楽しめるこのご時世、見る価値があるライブの映像とは?

暗い東京をさすらう歌手の痛切さ

ライブ映像の新視点【1】──前野健太

明かりが少ない渋谷のスクランブル交差点の真ん中で前野健太が歌う『トーキョードリフター』のワンシーン。
(c) 2011 Tip Top

■東京と流れ者を切り取ったライブテープ
 ドキュメンタリー作家・松江哲明が、2009年元日の吉祥寺を舞台に歌い歩く前野健太を74分ワンカットで追い撮った驚異的な作品が『ライブテープ』である。これはライブハウスにおいて計算ずくで設置されたカメラが切り取るライブの記録映像からは程遠く、あるいは入念に編集されたPVとも異なる。十全に前野健太のPVとして機能するだろうがしかし、吉祥寺という街に置かれた前野が仲間と合流し、井の頭公園へと流れていく道行きにあるのは、偶然性を味方としてマジカルな瞬間を呼び込む映画特有の作法ではなかったか。

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