軍事ジャーナリスト・清谷信一が見た「ここがヘンだよ自衛隊」

――軍事ジャーナリスト・清谷信一氏が、ズバッと指摘! 長年自衛隊をウォッチし、かつ現場の自衛官と交流を持つ中で氏が見た、"奇妙な軍隊"ぶりがよくわかる自衛隊の不思議エピソードとは?

その1
「天下りはニーズよりコネ優先」

 退職した将官の天下り斡旋組織として、防衛省から随意契約で仕事をしている、財団法人・自衛隊援護協会というものが存在します。天下りといえば聞こえは悪いですが、同協会はいわば退職将官のための無料職業紹介所として機能。退官した優秀な自衛官、特に災害出動の経験を積んだ人材を欲しがる自治体は決して少なくありません。ところが、いざ斡旋されるのが、防災の経験も知識もない海空の将官だったりするのです。これは、この団体に海空のOBが多いからだそうですが、自治体としては、そんな人に来られても困りますよね。 

その2
「裏金は隊員から搾り出し?」

 軍隊では、衣服や制服などは原則として官給品です。これは世界的に見れば当然ですが、自衛隊ではセーターなどの本来必要な被服が支給されず、自分で用意しなければなりません。業務に必要な運動着などを、半強制的に自腹で出入りの業者から購入させられることも多々あります。このような、部隊と業者の不透明な関係の中で、裏金が捻出されているケースも往々にしてあるそうです。硬直した組織をスムーズに運営するためには、必要悪とも言える裏金ですが、自衛隊の場合、全部ではないにせよ、それが自衛隊員の懐から捻出されているといっても過言ではないのです。しかも、発覚した場合に、詰め腹を切らされるのは現場の隊員たちなのです。

その3
「おもちゃを欲しがる子ども気分」

 現在、導入は難しいといわれているステルス戦闘機F-22は、確かに最先端機種であることは間違いないですが、非常に高価です。しかも、その能力を発揮するためにはAWACS(早期警戒管制機)や衛星など、ネットワーク戦のインフラが欠かせない。F-22は米軍だから運用できるのであり、自衛隊が使っても、十分な力を発揮できません。とかく新しいものを欲しがる様は、高いおもちゃを欲しがる子どものようですよ。

その4
「防衛駐在官はコスプレ自衛官」

 海外で軍事に関する情報収集を行う防衛駐在官ですが、彼らは防衛省から外務省へ出向して、その任に就きます。つまり、駐在時は外交官という身分。なので、言ってみれば、自衛隊の制服を着てるのはコスプレなんですよ。また、その活動費用は外務省が負担していますが、その額が非常に少ないため、他国の駐在武官と比べて活動の自由度およびその規模が圧倒的に小さい。海外での諜報活動が法律で禁止されている日本にとって、防衛駐在官の情報収集は非常に重要なのに、海賊や紛争など、問題山積みのアフリカに派遣される防衛駐在官はわずか1名だけというようなありさまなのです。

きよたに・しんいち
軍事ジャーナリスト、作家。日本ペンクラブ会員。近著に、『ル・オタク フランスおたく事情』(講談社文庫)、『軍事を知らずして平和を語るな』(ベストセラーズ・石破茂と共著)など。

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