西松建設&キャノン事件で狙われた大物政治家とは?

西松建設&キヤノン事件 西松建設事件とは、同社が裏金を複数の政治家に献金していた問題。08年11月に事件化。キヤノン事件とは、鹿島からキヤノン会長の周辺に裏金が流れていた問題。07年暮れに発覚。

 ここに来て、西松建設と大分キヤノン工場をめぐる事件の捜査が本格化。東京地検特捜部が手がけているだけに、政界に突き進むのかどうかが関心の的になっている。捜査は今後、どんな展開を見せていくのか?

 まず、20億円にも上る裏金づくりをしていたといわれる西松建設事件から見ていこう。特捜部は年明けの1月、海外でつくった1億円を日本に持ち込んだ外国為替及び外国貿易法違反の疑いで、西松建設の国沢幹雄前社長ら幹部5人を逮捕した。「いきなり企業トップを挙げるなんて珍しい」(司法記者)ともいわれるだけに、一気に裏金づくりの核心に踏み込んだ格好だ。

 当局の狙いはハッキリしている。特捜部が昨年11月下旬に西松建設本社など約20カ所を一斉捜索したとき、その中に、同社OBがつくった2つの政治団体が含まれていた。西松の裏金が政治団体を通じて政治献金へと"マネーロンダリング"され、政界にバラまかれていたとみているのだ。

 これらの政治団体は国会議事堂そばに事務所を構え、政界とのパイプを誇示していた。実際、その献金先を見ると、自民党の二階俊博氏率いる「二階グループ」を筆頭に、高村正彦元外相、そして森喜朗元首相といった派閥の領袖クラスが並んでいた。さらには、民主党の小沢一郎代表やその側近である山岡賢次国対委員長にも多額の献金が渡っている。「もらった政治資金が裏金から捻出されていたことを議員側が認識していれば、少なくとも政治資金規正法違反に問われる可能性がある」という法律の専門家の指摘もある。

 政治資金規正法違反は、ワイロをもらう収賄よりも微罪だが、それでも当局による家宅捜索を受ける容疑になり得るという。「いつ解散総選挙があってもおかしくないタイミングだけに、自民・民主のどちらの議員に踏み込むか。やられたほうは計り知れないダメージを受けかねない」(政治部記者)というから、西松建設事件が与野党をいかにヒヤヒヤさせているか想像がつくだろう。しかしその分、司法記者は「政局に影響を与えるなんて、特捜部長が政府寄りの今の特捜部は考えもしないだろう。中央政界への捜査は見送られる見込みだが、しかし、思わぬ展開を見せる可能性はある」という。

 それが、1年前からくすぶり続けてきた「大分キヤノン工場事件」との関連だ。この事件は、キヤノンが大分県に工場を進出させるに当たり、意中の鹿島建設に工場建設ばかりか県の工業団地造成工事も受注できるよう大分県に働きかけたというもの。その渦中に、鹿島から5億円もの裏金が日本経団連会長の御手洗冨士夫・キヤノン会長の周辺者側に流れたという構図だ。

 御手洗氏にとって大分県は、高校生まで過ごした生まれ故郷。「これまでの見立てを言えば、御手洗氏はやはり地元出身の広瀬勝貞・大分県知事サイドに働きかけたのではないか、そして巨額工事を受注できた鹿島がなんらかのお礼をしたのではないか、と考えていたが、今のところ5億円が御手洗氏まで届いたという裏付けはない」と国税担当記者。

「事件の構図は崩れたが、国税当局は1年前に大がかりな家宅捜索をしてしまい、おいそれと引くに引けない状況なんだ」

 そこで、ゲタを預けられたのが特捜部。特別な捜査班を設置して、鹿島をはじめゼネコンがかかわる談合事件の内偵捜査を進めた結果、こんな新たな構図が浮上したという。

「ここでも西松建設が登場するんだ。広瀬知事には、05年にパーティー券購入代金など数百万円のカネが例の西松系政治団体から渡っている。その時期に、西松が大分県内で大型公共工事を受注しているんだ」(司法記者)

 国税当局が抱えた大分の仇は、別件ながら、特捜部が取るという絵図。しかも特捜部は中央政界に踏み込めないジレンマがあるから、通産事務次官を経験した広瀬知事なら摘発する価値が十分あると踏んでいるようだ。果たして、これらの事件は、うまく"仕上がる"のだろうか。
(編集部)

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