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相次ぐ不祥事、そのウラには何があるのか?

計量失格にドーピング……日本ボクシング界が陥る興行とカネのジレンマ

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ボクシングの不祥事はなぜ続く?

日本ボクシング界で、現役チャンピオンよる不祥事が相次いでいる。WBC世界フライ級チャンピオンの比嘉大吾は計量オーバー、IBF世界スーパーフェザー級王座を獲得した尾川堅一はドーピング違反。一方、海外選手に目を向けると、意図的とも見られる減量放棄も……。こうした背景には、一体なにがあるのだろうか?


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「比嘉大吾選手に対する処分について」を知らせる日本ボクシングコミッションのHP。

 ボクシング界に醜聞が立て続いている。

 去る4月14日、3度目の防衛戦を予定していたWBC世界フライ級チャンピオンの比嘉大吾が、前日計量で規定の体重を作ることができず、秤の上で王座を剥奪された“事件”が世間を大きく騒がせた。

 デビューから15戦全KO勝ちの比嘉は、昨年5月に同タイトルを獲得したばかり。師・具志堅用高の秘蔵っ子としても注目を集め、バラエティ番組などにコンビで出演する機会も増えていた。計量に立ち会ったある関係者は、次のように語る。

「15連続KOは日本タイ記録で、今回の防衛戦でもKO勝ちを収めれば日本新記録でした。ところが、1度目の計量でまさかの900グラムオーバー。規定により2時間の猶予が与えられたものの、比嘉陣営は再計量に臨むことなくギブアップを宣言、失格となりました。日本の世界チャンピオンが計量に失敗するのは初のケースで、比嘉は連続KO記録どころか思わぬ形で歴史に名を残してしまいましたね」

 果たしてタイトルマッチは、挑戦者が勝てば王座獲得、比嘉が勝てば王座は空位という変則ルールで行われることに。結局、限界ギリギリまで搾りきった比嘉は精彩を欠き、9ラウンドTKO負け。順調に人気と知名度を上げてきた比嘉にとり、痛恨の失態だった。

「全KO勝ちのスター性と、沖縄出身らしい愛嬌で、比嘉はこれからの日本ボクシング界を背負って立つ存在になると期待されていました。しかし、連続KOもデビュー以来の連勝もストップし、王座も剥奪。まさに何もかも失ってしまったわけです」(同)

MEMO『興行とカネ』
周知の通り、国内外の選手による計量失格にもかかわらず、変則ルールなどで試合が行われた日本でのボクシング興行。無論、結果はファンの納得いくものではなかった。

 この一大事に、「またか」の思いがよぎったファンも少なくないだろう。その前月に行われたWBC世界バンタム級タイトルマッチでも、山中慎介との再戦に臨んだルイス・ネリ(メキシコ)が、これまた1.3キロの大幅超過で計量失格、王座を失ったばかりなのだ。

 そもそもこのネリ、昨夏に挑戦者として来日し、4ラウンドTKOで山中のV13を阻止した際には、ドーピング検査で陽性反応を示した前科がある。この時はなぜか「故意の摂取ではない」との言い分が認められ、ベルト剥奪を免れたが、1.3キロオーバーという数字には確信犯を疑う向きも多い。

「ネリは試合の9日前に来日した時点で、4キロオーバーという情報があり、『本当にリミットまで落とせるのか?』と懐疑的な声が飛び交っていました。確かにボクシング界では、計量の1~2日前に3キロ前後を一気に落とす、“水抜き”という手法が浸透していますが、世界トップの選手としてはあまりにも見通しが甘い。初戦で山中の実力を認め、念のため正攻法を避けたと見られてもやむを得ないでしょう」(スポーツ紙記者)

 やはり「山中が勝った場合のみ王座が移動」という変則ルールで決行されたこの試合。減量を放棄した者と、減量で疲弊した者のパワーの差は大きく、山中はわずか2ラウンドで倒されてしまった。

 確信犯的に減量を放棄して試合に勝ったとしても、タイトルを剥奪されては意味がないと思う人も多いだろう。しかし、コンディション作りを優先し、白星をキープしたほうが選手としての商品価値が守られる、という悪しき考え方があるのも事実なのだ。実際、日本ボクシング界から永久追放処分を喰らったネリは、早くも来月、アメリカで再起戦を決めている。日本のリングには上がれなくても、ボクサー活動さえ継続できれば、遠からず王座復帰のチャンスもあるだろう。

 実は計量失格の事例はここ数年、国内外で急増している。例えば、世界タイトルマッチほど大きく報じられることはなかったが、今年3月に後楽園ホールで予定されていた大森将平vsコーチ義人によるスーパーバンタム級8回戦では、コーチ義人がなんと1.8キロオーバー。ただし、さすがに体重差が大き過ぎることと、コーチ義人の脱水症状が深刻であることを考慮し、この時はコミッションが試合の中止を決定した。

 ならば山中慎介や比嘉大吾のケースでも、試合を中止すべきだったのではないかとの意見は、今なお根強い。しかし、テレビの生中継がセットされた興行で、カードに穴をあけるのはできる限り避けたいのが運営側の本音だろう。チケット購入済みのファンに対する補償も問題だ。

「結局、そうした事情によって試合を成立させねばならないとなれば、減量放棄もやり得ということになってしまいます。つまり、階級制競技の根幹が今、大きく揺らぎつつあるんです」(同)

 昨今のボクシング界を騒がせる問題は、それだけではない。昨年12月、アメリカのリングでIBF世界スーパーフェザー級王座を獲得し、揚々とベルトを手に帰国した尾川堅一だったが、ドーピング違反によって王座剥奪の処分が決定したのは、先月半ばのこと。今年の初頭に、尿検査において筋肉増強効果があるテストステロン【1】2種類に陽性反応が出たことが判明して以来、数カ月にわたって尾川の処遇が審議されてきたが、試合自体を無効とする裁定が下されたのである。

 海外での劇的な世界王座奪取であっただけに、ベルトはおろか試合をした事実そのものが公式記録から抹消されることに、ファンも業界も戸惑いを隠せない。「アトピー治療の塗り薬が原因ではないか」と潔白を主張してきた尾川陣営にとって、これは最悪の結末だろう。

「ただ、日本人ボクサーはもともとドーピングに手を染めるという文化が比較的薄く、尾川の故意を疑う声はほとんど聞かれません。むしろ問題なのはリテラシー不足です。日本ではドーピングは身近でなくても、世界ではそうではありません。アレルギー用の目薬や、軽度な疾病で服用する飲み薬にも、禁止されている成分が含まれていることはありますから、アスリートは口にするすべてのものを慎重に吟味するのが世界の常識。尾川のケースは、日本ボクシング界にドーピング対策の知識が致命的に不足していることを浮き彫りにしました」(同)

 もともとドーピングでズルをしようという思考自体が希薄であるため、対策が遅れている日本ボクシング界。また、厳しい減量を真面目に乗り越えたがゆえに、体調万全な確信犯に打ちのめされることもある。

 業界のリテラシー不足と興行優先主義が改善されない限り、同様の問題は今後も頻発するに違いない。

(友清 哲)

【1】テストステロン
大東製薬工業の説明よると、筋肉量の増加を促す男性ホルモンの一種で、筋力や筋持久力の増強を目的に、(テストステロンの類似物質である)アナボリックステロイドや男性ホルモンを過剰投与して、ドーピングや副作用の問題を指摘されるアスリートもいるという。ちなみに男性ホルモンだからといって「はげ」の原因にはならない、と同社は指摘している。

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