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高山真の「オトコとオンナとアイドルと」【24】

羽生結弦の「さらに進化した世界」を考えてみた/スケオタエッセイスト・高山真の平昌オリンピック展望

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『羽生結弦「覚醒の時」 (通常版) [DVD]』

 春から夏にかけて、「平昌オリンピック、現地に行くのが無理なのは分かっているけれど、テレビで観られるかどうかも分かんないかも…」という思いを抱きつつ過ごしていました。治療の甲斐あって、なんとかかんとか体調も上向き、来年もテレビ観戦はできそうです。フィギュアスケートが観られる…うれしい…。

 私が病院で過ごしている時期に、羽生結弦の今シーズンのプログラムの使用曲が発表されました。ショートプログラム、フリーとも、2015-16年シーズンのものを使うとのことです。

 5月下旬に行われたアイスショー「ファンタジー オン アイス」の中で、羽生結弦がショートプログラム『ショパン バラード1番』を披露した様子は、私もテレビで観ていました。アイスショーのリンクは競技用のリンクよりもかなり小さい造りになっているので、10月からの公式戦ではここからさらに改良を加えてくるのでしょうが、この5月に披露したプログラムが、ある意味「ベース」になるのは間違いないかなと思います。

 このエッセイの過去回で、羽生結弦のショートプログラム『ショパン バラード1番』のことを私なりに書いています。
http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2016/03/post_6615/
http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2016/04/post_6640/
http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2017/02/post_7387/

 過去、私は、「すぐれたプログラムは、曲の旋律やリズムと、エッジとのシンクロが素晴らしいもの。ポエミーな表現ですが、『氷は大きな楽器。その楽器を奏でる指や弦やバチに相当するものが、エッジ』という感じ。聞こえてくる曲は、スピーカーから流れてきているのか、エッジが演奏しているのか、一瞬錯覚してしまうほど」と書き、現役選手によるマイベストのひとつに『ショパン バラード1番』を挙げました。そのマイベストが、まず間違いなく、2015-16シーズンよりブラッシュアップされて届くわけですから、本当に大きな喜びなのです。

 アイスショーの中継は、上半身を中心に映していて、肝心のエッジワークが全く見えない箇所がかなりありましたが、それでも感嘆のため息を漏らした部分はしっかりあります。そんな私なりのツボを、箇条書きで記していきたいと思います。

●ジャンプの構成の変更。3つあるジャンプの要素のうち、2つを、プログラムの後半、得点が10%上乗せされる時間帯に持ってきている。2015-16シーズンは、後半に入れていたのはトリプルアクセルだけだったかと。

●トリプルアクセルの着氷後の流れ。過去のエッセイでも書きましたが、このプログラムでは、きれいなバックアウトエッジで着氷した後、流れのままにバックインエッジにチェンジするのが、「羽生結弦のオリジナリティ」のひとつでした。
今回は、バックインになったあと、フォアエッジへとチェンジエッジして、そこから1080度(3回転分)のターンを入れているのでは、と(ここ、上半身しか映っていなかったので、私の推測に過ぎないのですが)。
要するに、着氷した右足でおこなうトランジションが、より濃密になっている…と思います。で、その1080度のターンをしながら進んでいる距離も、結構えげつない長さのはずです。

●ステップシークエンスの中の、インサイドのイナバウアー。なんと言うか、「途中まではターン。いつの間にかイナバウアー」という感じの、非常にシームレスな実施。イナバウアーに入る直前の右足が、遠心力をガッツリ使って外側に振っているのにビックリ。
右足が氷に着くまでは、その遠心力ゆえに「かなり体軸の外側にブレてしまうのではないか」と思うのに、右足が氷をとらえるや、滑らかなイナバウアーのトレースに一瞬で入っている。こういった「さばき方」も、羽生結弦のオリジナリティのひとつに挙げたいと思います。
イナバウアーやイーグルで、エッジワークの上手さを魅せる選手が私は大好きなのですが、ほとんどの選手は、「左右それぞれの足をピタッと着氷させてから、グイン!と加速する」さばき方です。

 2015-16シーズンのグランプリファイナルでこのプログラムを観たとき、私は「ある意味、これは完成型かも」と思っていました。が、まだこれだけの「something new」を詰め込んでくるとは…。シーズンが本格的に開幕して、大きなリンクで、全身をしっかり映したカメラワークで、このプログラムがどのように見えてくるか。そして、フリー『SEIMEI』には、どんな「something new」が入っているのか…。本当に楽しみです。

 私のフィギュアスケート観戦は1980年から始まっていますが、今回のオリンピックの男子シングルは、この38年の中でいちばんの大激戦と予想しています。「ノーミスの会心の演技ができた人から、メダルが決まっていく」という形になることでしょう。羽生結弦も、宇野昌磨も、ハビエル・フェルナンデスもパトリック・チャンも、ボーヤン・ジンもネイサン・チェンも、というか、すべての選手が、オリンピックを万全の調子で迎えられますことを!

高山真(たかやままこと)
男女に対する鋭い観察眼と考察を、愛情あふれる筆致で表現するエッセイスト。女性ファッション誌『Oggi』(小学館)で10年以上にわたって読者からのお悩みに答える長寿連載が、『恋愛がらみ。 ~不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館)という題名で書籍化。人気コラムニスト、ジェーン・スー氏の「知的ゲイは悩める女の共有財産」との絶賛どおり、恋や人生に悩む多くの女性から熱烈な支持を集める。月刊文芸誌『小説すばる』(集英社)でも連載中。

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