>   >   > 【Iターン】増えるもうひとつの京都の姿

――京都と聞くと、どうしてもお寺や芸妓さんなどを想像してしまうが、それはあくまで京都市内の話。市外に目を向ければ、舞鶴や福知山などの自然豊かな北部地方があり、「海の京都」をPRしている。京都の中心街以外について、Iターンで同地に移り住み、伝統構法で大工仕事を手がける金田克彦氏に聞いた。

1608ayabe001_230.jpg
大」(だいかね)建築の金田克彦氏(右)と、妻の博子さん。自宅を利用した農家民宿を、ご夫婦で営んでいる。

「ほら、あそこ――」

 ズボンの腰に差し込んだ山刀をするりと抜いて、「金ちゃん」こと金田克彦さんは夏草の生い茂る草むらの一画を指し示す。

 ススキやドクダミやシダが密生した草むらの真ん中を突っきって、確かに何かが通り抜けたような痕跡がかすかに見て取れる。

「イノシシですよ。あの山の奥から下りてきて、ここを通って、畑や田んぼを荒らすんです。ほら、このへんから入ろうとしてる」

 金田さんが視線を向けた田んぼの脇の金網の下には小さな蹄が土を掘り起こした痕がいくつも残っている。

 田んぼの周囲には電気が流れる獣よけの囲いがめぐらされているが、昼間の今は電源が切られている。

「だいたい、夜中から明け方にかけて山から降りてくるんです」

 罠を仕掛ける場所は、山から獣が出てくる傾斜の下。落ち葉や枝の下に見えないように潜ませておくが、学習したイノシシは見事に罠の場所を避けて侵入してくる。だから、獣の動きを先読みして、定期的に罠の位置を変えていく。自宅の周囲の田んぼや畑と獣たちの住処との境界線上に仕掛けた、いくつもの罠を毎朝見て回るのは、金田さんと3人の子どもたちの役割だ。

 罠にかかる獣はイノシシと鹿が多く、自宅前の谷だけで年間で20頭から30頭も穫れた。「ただ最近は、うちの谷にはあまり来なくなって、うれしいような寂しいような……」

 捕獲した鹿やイノシシは槍で殺し、山奥の河原で内臓を丁寧に処理したあと、ナイフで皮をはぎ、解体する。解体した獣肉は金田家の食卓に並ぶほか、近隣の村人にもおすそ分けされる。小学4年生になる長男の太一君は、すでにナイフ一本でイノシシの解体をほぼ一人でこなす熟練者だ。

 罠猟は金田さんの趣味でも本職でもなく、この地域の農作物を守るための共同体の中での大切な役割だ。彼の本職は大工である。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...
この記事を購入※この記事だけを読みたい場合、noteから購入できます。

Recommended by logly
サイゾープレミア

2018年2月号

マンガ(禁)大全2018

マンガ(禁)大全2018
    • 【マンガ業界】最新動向
    • ネット時代【リイド社】の戦略
    • 【韓国】ウェブトゥーンが凄い
    • 【韓国マンガ】傑作6選
    • 【しらほしなつみ】コミケで見られない素顔
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【お笑い芸人・おたけ】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【田中考】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【辛酸なめ子】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【精神科医・岩波明】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【クロサカタツヤ】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【磯部涼】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【小林雅明】
    • 「君たちはどう生きるか」レビュー【更科修一郎】
    • 【井出智香恵】背筋も凍るレディコミ
    • 【リバーズ・エッジ】映画化のナゼ
    • 肉食系女子が読む【岡崎京子】座談会
    • 【少女マンガ】のファッション研究
    • プロが見る【風早くん】の服装
    • 服部昇太【80年代】マンガへの礼賛!
    • 【ナチス描写】の海外規制事情
    • 【エロ描写】は海外でこう扱われる!
    • 本家を超える【スピンオフ】を探せ!
    • マンガの神様の【スピンオフ】作品
    • ポスト【ウシジマ】貧困マンガ
    • 【藤子・F・不二雄】の変態的な性癖
    • マンガ家【下半身ゴシップ】

基礎教養としてのフリーメイソン

基礎教養としてのフリーメイソン
    • 【橋爪大三郎×フリーメイソン幹部】陰謀論の基礎知識

酒井萌衣「卒業」と「初体験」

酒井萌衣「卒業」と「初体験」
    • 【酒井萌衣】元SKE48が初水着!

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • マルサの女/【わちみなみ】
    • 【柳ゆり菜】初めてジャネットで踊った日
    • 【岡田サリオ】時代は巨乳から巨尻へ
    • 【沙月とわ】海に行ったことがない女
    • 巨人のコーチになった異色の陸上選手
    • 私と【美玲】を連れてって
    • 2018年は本格的なIT制度の見直しが始まる
    • 高須基仁の「全摘」
    • 【ヤリマン】のトークに無限の可能性
    • 【アイドル】が音頭に没頭する背景
    • 哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」
    • 【AV出演強要問題】女優たちの悲痛な願い
    • 【新型うつ病】が隆盛する生きづらい日本
    • 町山智浩「映画でわかる アメリカがわかる」/『スリー・ビルボード』
    • 【ポスト・トゥルース時代】の保守とリベラルの役割
    • 小原真史の「写真時評」
    • 「念力事報」/UFO入門2018
    • ジャングルポケットの「アダルトジャングル探検録」
    • なぜ女芸人は「ブス」をネタにするのか?
    • アッシュ・ハドソンの「アングラ見聞録」
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」/span>
    • 幽霊、それでもマンガは楽しき商売。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』