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第1特集
角川映画、深作欣二、そして高橋伴明監督との念願のタッグへ

最新作『安楽死特区』で挑んだ脚本家人生の到達点

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『野獣死すべし』『探偵物語』など数々の名作を手がけてきた脚本家・丸山昇一。念願だった高橋伴明監督との初タッグが、
映画『安楽死特区』でついに実現。二人の創作の裏側と脚本術を語る。

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(写真/淵上裕太)

──今回の映画『安楽死特区』で高橋伴明監督と初タッグを組まれていますが、どういう経緯だったのでしょうか。

丸山昇一氏(以下、丸山) 僕は1979年に東映セントラルフィルムの『処刑遊戯』という映画と、テレビドラマ『探偵物語』(日本テレビ系)でデビューしたのですが、その前後に「ピンク映画にすごい監督がいる」と高橋伴明さんの噂を聞いていたんです。時間がある時に作品を観たのですが、伴明さんは普通のピンク映画とは全く違っていて、商売を考えないで作っている。よく、これで次回作のオファーがくるものだと思いました。

──陰鬱で残酷な作品が多かったですからね。

丸山 そうそう。ただ暴力的じゃなくて、人間が本来持っている激しさというか。ダメな人生を送っているんだけど、簡単にはくたばらない。ただのメロドラマとは違って軟弱じゃない。一方、僕は軟弱な脚本ばかり書いていましたから(笑)。

──そんなことはないですが。

丸山 もともと僕は、どっちつかずの青春を軽く描きたかったんです。伴明さんも、どっちつかずの青春を描こうとしているんだけど、弱気のどっちつかずじゃなくて、大いなる怒りと共に抗っていて摩擦熱がすごいんですよね。それをピンク映画でやっているんですよ。僕はそういう脚本を書こうとは思わないけど、そういう力強さを持つ監督と一回組みたいと思っていました。初の一般映画『TATTOO〈刺青〉あり』(82)も強烈で、やはり半端じゃない魅力のある監督だと思いました。『愛の新世界』(94)も激しいんですけど、軽い。その軽さがまた巧緻に組まれて、上手い。やっぱり、この人も僕と同じくアメリカン・ニューシネマの影響を受けているなと感じました。それで、ずっと伴明さんがOKを出すのであれば、一緒にやらせてくれと周囲にも言っていたのですが、なかなか実らなかったんです。

──お会いする機会はあったんですか。

丸山 以前、「シティロード」(エコー企画)という雑誌で対談したことがあったのです。その当時、僕は角川映画を多数手がけていて、別に鼻を高くしていたつもりはなかったんですけど、「角川映画なんかやっていて楽しいの?」と言われました。対談が終わった後は「酒飲みに行くか」と新宿ゴールデン街で飲んだんです。その時に、伴明さんから絡まれる寸前になったんですけど、僕は結婚式場の司会で食っていた時期があったので、修羅場の前でいかに盛り上げるかというのは得意。それで冗談を言い倒したら、『痛くない死に方』(21)の後半でも、宇崎竜童さんと柄本佑くんの掛け合いに人間の面白さがにじみ出ていましたが、伴明さんも笑いの分かる人ですからね。最後は伴明さんも根負けして、僕のダジャレに大笑いしていました。それで一夜で、「また今度飲もうな」という話になりました。その後も映画業界のいろんな会で会うんですけど、伴明さん普通にペラペラしゃべる人ではないから挨拶程度。僕も話したいことは山ほどあるんですが、話し出すと変に持ち上げてしまう癖があるので、嫌がられそうだなと思って、積極的に話しかけなかったんです。それでも時々ファンレターのようなものや年賀状は送っていました。それから幾星霜を経て、ようやく組むことになったんです。

──どういうふうにオファーがあったんですか。

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(C)「安楽死特区」製作委員会

『安楽死特区』


舞台は、実験的に「安楽死特区」が設置された今から数年後の日本。主人公のカップルは、回復の見込みがない難病を患い、余命宣告されたラッパー・酒匂章太郎と、彼のパートナーでジャーナリストの藤岡歩。安楽死法に反対のふたりは、特区の実態を内部から告発することを目的に安楽死特区への入居を決意する。そこでふたりが見たものは……。

章太郎役に毎熊克哉、そのパートナー歩役には大西礼芳。特区の実態を告発するために突き進む歩が、章太郎の心境の変化に直面する様は、観る者の心を激しく揺さぶる。


2026年1月23日より新宿ピカデリーほかにて公開 監督:高橋伴明/原作:長尾和宏/小説「安楽死特区」ブックマン社刊/脚本:丸山昇一/制作協力:ブロウアップ/配給:渋谷プロダクション/製作:「安楽死特区」製作委員会(北の丸プロダクション、渋谷プロダクション)
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