サイゾーpremium  > 特集  > 政治・経済  > 華麗かつたくましき、高市早苗の政治半生
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台湾有事を想定した高市首相の答弁に対する中国の反発は長引き、深刻な問題になりつつある。日本人アーティストによる中華圏でのコンサートが中止になるなど波紋は芸能界にも広がっているが、そもそも中国は何に対して抗議しているのだろうか?

「武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態に当たる可能性が高い」

事の発端は、11月7日の衆院予算委員会における、高市首相のこの発言だった。立憲民主党の岡田克也衆議院議員が、高市首相が2024年の自民党総裁選で、中国による台湾有事で存立危機事態になる可能性について言及したことを掘り起こし、「どういう場合に存立危機事態になるという考えだったのか」と質問したのに対し答えたもの。率直な高市首相の答弁に、質問した当の岡田氏自身も驚いた表情を見せたとか。結果、余計な質問をして問題を招いたと岡田氏のほうも一部の人たちから非難されることになるのだが……。

そもそも存立危機事態とは2015年に成立した安全保障関連法で、日本が直接攻撃を受けていなくても密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされる事態と政府が認定すれば自衛隊が集団的自衛権を行使できる、というもの。歴代の総理は具体的にどういう事態が存立危機事態になるのか質問されても曖昧にはぐらかしてきたが、今回の高市首相の答弁は台湾有事の際に自民党が米軍と共に武力行使に踏み切る可能性をはっきりと示した格好になってしまった。

なぜ高市首相はそこまで踏み切った発言をしたのか。発言がすぐさま中国との国際問題になった後の11月26日に高市首相は立憲民主党の野田佳彦代表との党首討論で、「質問者から台湾有事に限定し、シーレーンの封鎖に言及して質問があった。私も具体的なことに言及したいとは思わなかったが、政府のこれまでの答弁をただもう一度、もう一度と繰り返すだけでは場合によっては予算委員会を止められてしまう可能性もあるということで、具体的な事例を聞かれたので私は誠実に答えたつもりだ」と述べ、発言の撤回はせず。

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2025年11月7日の発言が波紋を呼んだ高市早苗首相。(写真/Getty Images)

高市首相の答弁に対し、中国政府は強い言葉で繰り返し非難声明を発表。薛剣駐大阪総領事は11月8日に自身のXアカウントで高市首相に対し「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と投稿。中国外交部は同14日に「日本の指導者が公然と台湾に関する露骨な挑発を行い、人的交流の雰囲気を著しく悪化させ、在日中国人の身体と生命の安全に重大なリスクをもたらしている」として、自国民に対し当面の間日本への渡航を避けるよう厳重に注意喚起した。

同18日には外務省の金井正彰アジア大洋州局長が北京の中国外交部の劉勁松アジア局長を訪問。劉局長が両手をポケットに突っ込んだまま金井局長と話す様子が中国国営中央テレビで報じられ、広く拡散された。一連の事態の影響は芸能分野にも及び、上海では同日に開催されたイベントで歌手・大槻マキの公演が演奏中に突然中断。翌29日に予定されていた浜崎あゆみのコンサートも中止になった。

こうした一連の事態に対し、日本でも中国への反発が強まり、高市首相の支持率はむしろ高止まり。自民党の麻生太郎副総裁は12月3日、東京都内の会合で「中国からいろいろ言われているが、言われるくらいでちょうどいい。今まで通りのことを具体的に言っただけで何が悪いのかという態度で臨んでおり、大変喜ばしい」と語り、自民党のドンからのお墨付きももらった格好に。問題の台湾でも高市発言を好意的に受け止める人は多く、頼清徳総統は中国政府が日本産水産物の輸入を事実上停止したことを受けて、自身のSNSで北海道産のホタテや鹿児島産のブリを食べたことを投稿。日本に感謝する姿勢を示した。

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