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AmamiyaMaakoの「スタジオはいります」【3】

【KEN THE 390】人と違う道の選択はコンプレックスではない!

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――クリエイティブを学び取れ! 気鋭のDTM女子による音楽道場破り

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(写真/河本悠貴)

[今月のゲスト]

KEN THE 390(けん・ざ・さんきゅーまる)

1981年、東京都生まれ。06年にアルバム『プロローグ』でデビュー。コンスタントに作品をリリースするかたわら、フリースタイルバトル出身のスキルを生かし、テレビメディアをはじめ、多方面で活躍中。今年3月にアルバム『en route』をリリースしたばかり。
Twitter〈@KENTHE390
Instagram〈@KENTHE390

今月は「フリースタイルの貴公子」と呼ばれ、ご自身の作品もコンスタントにリリースされているラッパーのKEN THE 390さんにお話を聞きました。私は楽曲によってラップをすることもあり、リリックやパフォーマンスについてはもちろんですが、制作やスタイルの確立など、さまざまな視点からお勉強させていただきます!

AmamiyaMaako(以下、M) KENさんがラップを始めたきっかけを教えてください。

KEN THE 390(以下、K) もともと中学からバンドをやっていて、高校になってベース担当になったんです。当時はリンプ・ビズキットやリンキン・パークなどのミクスチャーが流行していて、それこそサウンドはヘヴィーなロックだけどボーカルスタイルはラップのような。バンド自体がヒップホップとコラボすることも多い時代だったので、自然とラップを聴き始めました。ハマったのは実際に(自分で)ラップをするようになってから。学生バンドは基本コピバンなので、楽器が上達しないと演奏できないのに対して、ラップをすることはコピーする概念がなかったので、とにかく面白すぎて。自分でリリックを書いて、ありもののインストにラップを乗せたら「一晩で曲ができちゃったじゃん!」って感激しましたよね。それに気づいてからは、メンバーがラップにハマったことでバンドは崩壊、その後、僕が楽器に触れることは一切ありませんでした(笑)。

M KENさんはどのようにリリックを書き上げるタイプですか?

K 全体のテーマを決めて、頭から書いていくタイプです。まず16小節を書き上げて、その都度書き進めながら修正していく。そこから細かな部分を煮詰め、構成を変えたりしますね。

M ラップは言葉数が多いじゃないですか。なので、「どうやったらうまく伝えられるんだろう?」と悩むことが多いんですが、何か工夫されたりしていますか?

K ラップはメッセージ性も大事ですけど、韻を踏むというゲーム性かつ競技性というスキル勝負も重要になってくる。韻を踏むことを意識しすぎるとリリックが書けない、という悩みにぶつかる時期があると思うんですけど、韻を踏むことに慣れてくると演説みたいに書けるんですよ。むしろ(韻を踏まない)フリーフォームで書かされるより、韻を踏むというルールを設けられたほうが書けるようになってきます。ベタですけど、熟練するためには(書く)量だと思います。

M すると1曲が完成するまでの時間もそこまでかからず?

K 気持ちがノッてたら1ヴァース1時間、1曲は2~3時間でできます。

M す、すごい早い……!

K もちろん、できないときはできないですけどね(笑)。

M そういうときの対処法は?

K 僕は基本、複数の曲を同時進行で制作しているので、できなかったら違う曲に移ります。粘ってもいいものは出てこない。制作している曲の中には、自分名義のものではなく『ヒプノシスマイク』のような誰かの曲を書く場合もあるので、気持ちも切り替えやすくなりますからね。

M ラップにはさまざまなスタイルがあると思うんですけど、ラッパーの人たちは、自分のスタイルではないものでも変幻自在に変えられたりするんでしょうか?

K 変えることは可能だと思いますよ。でも、例えばK-POP的なラップの場合、同じラップではあるけど、楽譜に譜面として起こせるほど音楽的なラップスタイルなので、必要なトレーニングを受けないとこなせない、というのもあります。日本語でも音程がしっかりしているラップはありますけど、音符としてはハッキリしていないものが多い。ただ、それがラップの持つ自由さであり醍醐味でもあるし、そこでアーティストとしての個性やスタイルがにじみ出ますからね。基本的に僕はラップのスタイルに関しては全肯定型で、どんなものでも自分の個性として昇華できていれば面白いと思います。たとえ譜面に起こせないラップでも、それがエッジになっている曲はたくさん存在してきたわけですからね。

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「フリースタイルはできない!」と言いながらも、ヌンチャク片手にフリースタイルなバトルを挑むまあこ。お茶の子さいさいと言わんばかりにKEN THE 390はサイで応戦。
(写真/河本悠貴)

M KENさんはそれをどこで学んだんですか?

K ラップはみんな独学だと思いますよ。もちろん、参考にしたアーティストはいますけどね。ただ、僕もスタイルで思い悩んだときはありましたよ。見た目がラッパー然としていないし、ヒップホップ的な魅力のひとつであるルードさもなかったですから。でも、活動を続けていく上で「そうじゃない自分もいいな」と、ずっとコンプレックスに感じていたことを払拭できるタイミングもありました。思い悩んでた時期は、それこそリリックも書けませんでした。

M そんな時代が……。

K 開き直れるまでは、漠然とした他者への憧れが強かったですよ。長く活動していると、周囲の評判だけではなく世間的な評価の波も加わってくる。それが悪いときは、「自分を信じ続けるか、もしくは違うところにフォーカスすべきなのか」を考えましたね。

M そんなふうに見えたことがなかったので驚いています。

K 今でも常に何かしらのコンプレックスと戦ってますよ。

M 私も実はコンプレックスがあって、音楽にのめり込む前までは言語学の勉強をずっとやっていたんですね。なので、「昔はどんなことをやってたの?」と聞かれても、「音楽以外の勉強やってたのかよ」と思われるのが怖くて言いたくなかったんです。でも、KENさんのお話を聞いたら胸が……キュッとしました。

K 言語学、いいじゃないですか! 僕は大学卒業後、リクルートに就職してサラリーマンをやりながらラップしてましたけど、1周するとオリジナリティになるんですよ。みんなと違うことが、こんなにいいことだったなんて! って思えるようになる。「こんな経験や知識、どこで役に立つんだよ!」という考えも、その時の自分の意見であって、長い将来、もしかしたら役立つ瞬間がくるかもしれませんから。実際、サラリーマン時代にエクセルを使っていて、「ラッパーになったらどこで役立つんだ」と思ってましたけど、今は自分の会社を立ち上げて経理もやっているので、エクセルをやってたことがめっちゃ役立ってます。

M ラッパーの方に会うのは、正直ちょっと怖かったんですけど……KENさんのおかげで、今まで話せなかったコンプレックスをスッと話すことができました。最後に、今後のヒップホップシーンがどのようになっていくことが理想だと考えていますか?

K テクノロジーの発達によってオートチューンが当たり前になって、極端な話、歌の修練もなくなってしまった時代なので、アーティストそれぞれの表現欲求が試されている時代だと感じています。いかに確立した自分を見せられるかが鍵になってくる。その欲求や衝動を簡単にアウトプットできるのがラップの面白さだと思うので、それがもっと世の中に伝わればいいなと思っています。

【今月の教訓】
人と違う道の選択はコンプレックスではない!

(構成/佐藤公郎)

AmamiyaMaako(あまみや・まあこ)
シンガー・ソングライター、かつトラック・メイキングも自ら担うDTM女子。2017年にファースト・アルバム『Baby scratch』をリリース以降、コンスタントに楽曲を発表。シンガー・ソングライターのHALLCAと仮谷せいらのユニット〈はるかりまあこ〉としても活動中。
Twitter〈@amamiyamaako
Instagram〈@amamiyamaako

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