サイゾーpremium  > 特集  > アダルト  > オネエスタイルダンジョンの功績【1】/ラップのタブーを破る【新宿二丁目MCバトル】

――今年9月で放送開始から丸4年を数えたMCバトル番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)。ここから始まったフリースタイル・ブームは、バラエティ番組やCMへと飛び火し、いつしかその熱は日本屈指のゲイタウン〈新宿二丁目〉にも引火。差別と戦う二丁目の街で、ひっそりと『オネエスタイルダンジョン』が誕生していた。

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(写真/永峰拓也)

 本誌16年11月号で「ラッパーはなぜ嫌悪を示す? ホモフォビアの歴史と変遷」なる企画が掲載され、そこには「同性愛者を嫌悪するホモフォビア文化が根深く残る米ヒップホップだが、そのルール変更を促す意識改革が起きている」という文言があった。確かに、12年のフランク・オーシャンのカミングアウトを皮切りに、近年でもリル・ナズ・Xやテイラー・ベネット(チャンス・ザ・ラッパーの弟)など、ブラックミュージックを基盤とする多くのラッパー/シンガーが、自身のセクシュアリティをカミングアウトしてきた。しかし、それでも「寛容である」とは言い切れず、表面化していないだけで差別意識は根深く残っているのが実情だ。そんな中、日本屈指のゲイタウンである新宿二丁目で、「オネエスタイルダンジョン」(以下OSD)なるイベントが、ひっそりと誕生していた。そのタイトルが表す通り、放送開始から5年目を迎えた人気番組『フリースタイルダンジョン』からインスパイアを受けたものだ。

 そもそも新宿二丁目、引いてはゲイカルチャーの音楽の中核を担うのはハウス・ミュージック。そうした背景もあって、いささか勝手な見解かもしれないが、「ゲイの人はヒップホップに無関心」という印象が強い。それは前述した通り、長きにわたるホモフォビアの歴史を持ち、ある種、同性愛者を威圧/迫害するかのようなスタイルを貫いてきたヒップホップというジャンルに身を寄せる必要性がないからだ。もちろん、中には育ってきた環境や、多感期に衝撃を受けた音楽がブラックミュージックであったことで、ヒップホップに愛情を注ぐゲイもいる。そこに『フリースタイルダンジョン』の盛り上がりと、冒頭で述べた昨今におけるLGBTへの理解の深まりが相まって、新宿二丁目は「オネエスタイルダンジョン」なる禁断の一手に手を伸ばしたのではないだろうか。

 本稿では、同イベントの主催者であるアロム奈美江とスヌープバタ子の両氏を直撃。アロム氏は安室奈美恵を愛する女装パフォーマー/ライターであり、バタ子氏は〈西新宿パンティーズ〉という新宿二丁目発(初)のヒップホップ・ユニットのMCのひとりでもある。そんな2人に開催の真意からヒップホップとLGBTの関係も聞きつつ、さらには同イベントで吐かれた珠玉のパンチラインも紹介しながら、新宿二丁目とフリースタイルの邂逅について詳らかにしていきたい。

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次回の「オネエスタイルダンジョン」は12月6日(金)に開催。すでにラッパーのACEがゲスト審査員、DJ WATARAIがDJを担当することがアナウンスされている。

――開催のきっかけから教えてください。

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