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「マル激 TALK ON DEMAND」【150】

【神保哲生×宮台真司×牧原 出】官邸への絶大なる権限集中――その弊害と行く末

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――ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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『崩れる政治を立て直す 21世紀の日本行政改革論』(講談社)

[今月のゲスト]
牧原 出[東京大学先端科学技術研究センター教授]

政治改革の時代といっても過言ではなかった平成。結果として日本が選んだ制度は、首相官邸への権限集中だった。だが、官邸の高圧的な命令と態度は、役所や官僚による公文書データの改ざんやメディアへのリークという形でその弊害があらわになっている。ダブル選も叫ばれる中、日本の政治は崩壊の淵にあると専門家は見るが……。

神保 気がつけば、7月、あるいは8月の参議院選挙が迫っています。しかし、世間の政治に対する関心は至って低いような印象があり、このままでは投票率も低くなりそうです。結構、政治がやばい状況になっていることは明らかなのに、なんでこんなに関心が低いんでしょうね。

宮台 人が何かにコミットするのは、「ステアリングできる」という感覚があるからです。何をやっても手応えがなければ徒労感だけが残り、人はコミットしない。これは嘘だ、捏造だ、と言っても基本的にスルーされるし、政権は国民の多くがその問題をスルーすることがわかっている。こうなってしまっては、「興味を持て」と言っても無理がある気がします。

 また、株価や失業率はいくらでも盛れますが、GDPや潜在成長率、労働生産性など、どんなデータをとってもひとつもいいところがない中で、ある程度、見通しがつく人は、「いまさら野党に政権交代してもらったところで、何もできない」と思うでしょう。

神保 マル激は、そんな世間の空気に抗っていきたいと思います。そこで今回は、政治に関してとても面白い本の著者をお招きしました。『崩れる政治を立て直す 21世紀の日本行政改革論』(講談社現代新書)というタイトルなのですが、政治がまさに今、ボロボロになっているんだ、ということを再認識させていただきました。著者は、東京大学先端科学技術研究センター教授の牧原出さんです。

 政治改革の30年となった平成の時代を通じて権力の一極集中が図られた結果、安倍政権では歴代の政権ではなかなか実現できなかった法律が次々と通っています。それを安倍さんの強いリーダーシップのなせる業だと受け止めて、肯定的に評価している人もいるようですが、政治学者として安倍政権をどう評価されていますか?

牧原 振り返れば、2009年と12年の政権交代は、必ずしも準備が十分ではなく政権を獲得したという意味では、当初はどちらも危なっかしいものでした。12年の政権交代のあと、今の政権が短期で崩れ、機能不全を起こしていたら、いくら選挙をやってもダメだと、宮台さんがおっしゃった徒労感以上のものが生まれていたでしょう。確かに政権は、問題含みのさまざまな法律を通していますが、社会的ニーズがあるから通しているという面もあり、わりとリベラルと言われる政策までやってしまう、ということになってきている。つまり、「やらなければならないことをやる」ということになっているんです。

 ただ、一体日本をどこに向かわせるのか、どういうビジョンで政治を行うのか、という目的が、この政権は見えなくなっている感じがある。いくら長期政権だからといって、それが「強い」ということには必ずしもならないと思います。

宮台 ニーズに合わせると、実はマーケティングは失敗するし、それはポリティカルなゲームも同じです。つまり、ゲームをしているうちに、ゲーム盤自体が壊れる、ということが起こりかねない。しかし、それを言っても通じるような前提――コモンセンスだったり、仲間意識、共同体意識というものがもうないので、自分が見たいように物事を見た上で、自分が快楽だと思うほうを選択することになる。選挙民だけでなく、霞が関の役人までそうなっている状況だと思います。民主主義に対する幻滅がかなり広がっており、それが政治的な無関心を加速するのは当然のことで、問題は深刻です。

牧原 日本は、これまでは変化が遅れてやってくる一方で、バブル崩壊をリーマンショック以前に体験したり、今、特にヨーロッパで効いている長期のデフレもずっと早い段階で経験したり、人口減も世界に先駆けていたりと、問題を先取りしているところがあります。

 90年代にそうした問題が噴出し、さまざまな改革が行われましたが、当時はまだインターネットの時代ではなかった。さまざまな問題がインターネットの中で増幅される今、古い世代――民主党政権の中にもそういう人が多かったのですが、インターネットが低速のダイヤルアップだった時代のような発想の改革で対応しようとしている人たちがかなりいるように私は感じています。これは非常に危ない状況です。

神保 歴史的に見れば、民主主義が崩壊したのは、今回が初めてではありません。20世紀後半に我々は民主主義の空前の繁栄を享受しましたが、仮にそれがこういう形で壊れた場合、未来の政治学者たちは崩壊の原因をどこに見いだすと思われますか?

牧原 20世紀の民主主義の崩壊は、基本的にファシズムによるものでした。戦後、それを立て直したのが福祉国家だというのが、西側の議論。しかし、福祉国家が今まさに危なくなっていて、それを経済との関係でどう見るか、ということがひとつあります。

 また、もうひとつ大きい要因が、今「戦争」というものができるか、ということです。高度化された高価な兵器は実戦に投入したら大損ですし、昔ながらの兵器で武装した集団同士の紛争はあるにしても、国家間戦争というのは非常に起こりにくい。

 その中で終わりのない日常生活を送る人たちの心理はどうなるか。今の若い学生と話していても、公の秩序を作るというのはどういうことなのか、というイメージが持てていません。

ひとつの省より大きい官邸の権力とは?

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